極道に過ぎた、LOVE STORY
 「幸、学校はどうだ?」

 長い出張から帰ってきたパパが、私を膝の上に乗せて行った。

 「楽しいよ」

 「そうか。先生に怒られたりしてないか?」

 「してないよ」

 そう、先生はクラス全体に注意をする事はあっても、私だけを注意することはない。皆と同じように挨拶もしてくれるけど、特別話を聞いてくれる事もない。


 「意地悪なお友達はいないか?」

 「いないよ」

 そう、友達は皆仲良くしてくれる。でも、喧嘩した事はない。皆、私の言うことに反対したりしない。だから、私は、どんな時も自分の意見を言わない。


 「でも、学校、行かなくてもいいかも」

 私は、何気にパパに言ってしまった。

 「どうしてだ?」

 「よくわからないけど、そう思っただけ。仲良しのお友達、お誕生日会には来てくれないと思う」

 すると、パパは私の体の向きを変え、向き合うように座らせた。

 「幸。幸には、これから辛い思いをさせてしまう事があると思う。でも、それは、絶対に幸が悪い訳じゃない。でも、いつかパパが変えるから。その時、幸が自分の力で生きていけるよう強くなって欲しい。いいか」

 パパの目が真っ直ぐに私を見ていた。


 「うん」

 私はパパの言う意味がよく分からなかったけど、大きく頷いた。


 「学校は行きなさい。人を見るんだ。そして勉強はしっかりしておくんだ。必ず必要な時が来る」

 「はい」

 「さすが幸だ。誕生日会は、家の者達でやろうな。幸の好きな物、たくさん作ってもらおう。幸は何が食べたい?」

 「えっと。お蕎麦」

 「えっ?」

 パパが驚いたように目を見開いて笑った。パパは、笑った顔もかっこいい。
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