極道に過ぎた、LOVE STORY
 「パパ!」

 「邪魔して悪いな。幸が、世話になった友人が来ていると聞いてね」

 ワイシャツにスラックスという、比較的リラックスした格好ではあるが、両脇に男を付かせて入ってきたパパは、貫禄がすごい。

 「お邪魔してます」

 康は、背筋を伸ばしカチコチで挨拶している。


 「わたくし、長岡玲香と申します。幸さんとは、大学で仲良くさせて頂いております」

 さっきまでの、キャピキャピした姫はどこに行ったのかと思うくらい、清楚に礼儀正しいく挨拶する姿は、間違いなく長岡総合病の令嬢だ。

 「長岡さん? 今度、幸が実習でお世話になる?」

 「ええ。長岡総合病院は、うちの病院です。お父様も、何かありましたら、いつでもお越しください」

 「あははっ。病院の営業は始めてだ。面白いお嬢さんだ。きっと、素晴らしい病院なのだろうね」

 「ありがとうございます」

 玲香は綺麗に頭を下げた。


 「あの、お父さん」

 康がいつになく真剣な顔でパパを見た。

 「何だね?」

 「幸さんを、俺に守らせてもらえませんか?」

 康の言葉に、パパの表情が変わった。


 「康、何言っているのよ」

 「この前も、大学の中で狙われてます。僕を、幸さんのそばに居させて下さい」

 「この世界を知っているであろう? 素人が簡単に手を出せるものじゃない」

 「分かってます。でも、幸さんが危険な目に遭うことだけは嫌なんです。」

 パパが、じっと鋭い目を向けるが、康はその目を逸らす事はなかった。


 「幸、いい友達を持ったんだな。私は嬉しいよ。ゆっくりして行って下さい」

 パパが、部屋を出ていく。

 お願いパパ、康と玲香をこの世界にかかわらせる事だけはしないで……


 「はあー。お父さん渋くてカッコよかったぁ。幸の周りはなんでこんないい男ばっかりなの? たまんないわ」

 玲香が、両手を頬に当てて言った。

 「お前、すごいな。顔が良きゃ、誰でもいいのか?」

 「はあ? 失礼ね。カッコいい人をカッコいいて言って何が悪いのよ」

 また、ドアがノックされ、ソフトクリームとカフェオレが運ばれてきた。


 「お嬢、夕食を用意するように、三代目から言われております。何かご要望はありますか?」

 若い奴が、メモを取る用意をして言った。

 「ええー。いいの? 何がいいかな?」

 「おい、いい加減にしろ」

 康が、言ったが玲香には入らなかったようだ。

 食べたいものを、キャピキャピしながら男に告げていた。

 まあいいか。色々世話になったし、夕食くらいは……

 そう思って諦めた私の顔を見た康は、ふっと笑みを見せた。
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