極道に過ぎた、LOVE STORY
真実を知るまで
 病院実習が終われば、国家試験勉強だ。試験に向けて必死な中で、組の動きがおかしい事も感じてはいた。以前、私を襲った男達に命令した奴の素性もわかってきた。

 「えっ? 幸を襲ったのは、スカイグループだって言うのか? あの大手企業の?」

 「うん。羽柴が言うから間違いないでしょ?」

 「でも、なんで? 日用品を取り扱う大手企業だろ? なぜ、ヤクザの娘に手を出す?」

 「表向きは日用品だけど、裏でなんかやっているみたいだ。その裏と、うちの組の若い奴が絡んでしまったらしい」

 「なんかって?」

 「詐欺的なことだと言ってた。うちは、一般人を騙すような詐欺はやらないからね」

 「そうなのか?」

 「そうだよ。ヤクザだからって、何でも悪い事しているわけじゃない。でも、なんとなくだけどうちがやらない悪い事に巻き込まれている気がする」


 「その後、襲われるような事はないよな?」

 「ないよ」

 これ以上、こんな話をしていても康の心配が増すだけだ。


 「そんな事より、康は仕事どう?」

 「まあ、相変わらずだよ。でも、給料入るようになったからさ、今度、飯行こう」

 「はあ?」

 「国家試験終わったらいいだろ?」

 「うん。考えておく」

 「何食べたいかも、考えておけよ」

 康の大きな手の平が頭の上をポンポンと叩いた。

 すごく、すごく胸の奥がキューンと痛くなったが、気付かぬふりをして、目の前のテキストに目を落とした。


 ほとんどの時間を試験勉強に費やし、大学へ行く事は減ってきていたが、私への視線は以前より厳しくなっているような気がする。詐欺やドラックの事件が相次ぐと、大概ヤクザが絡んでいるよいう視点になるから仕方ない。

 でも、今は試験に集中する事で、周りの噂話を意識せずに済んだ。


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