極道に奏でたLOVE SONG
 学校生活は変わる事なく過ぎて行き、そのまま中学進学をして三年を迎えた。この年になれば、私の家の事に皆も理解できるようで、友達と言っても皆、当たり障りなく距離を置くようになっていた。

 成績もトップを譲らず、授業をサボる事もしない。先生が特別に指導しなければならない事もしない。

 時々、表面上の友達が家族で旅行に行った話や、両親の喧嘩の話をする。私には想像もつかない世界であるが「人を見るんだ」と、パパが言ったこと関係がある気がした。知らない世界を聞いておくことも必要だと思った。


 放課後、玄関まで行くが、スマホを忘れた事に気づき、仕方なく教室に戻ることにした。

 「なあ。お前の親父どこに行ったんだよ。お前と母さん置いて逃げたのか?」

 「違う?」

 「はあ? お前の親父のせいで、俺のパパも大変なんだってさ。お前が、代わりに金返せよ!」

 「そんな…」

 教室の中から聞こえてくる声。ガタッと机が倒れる音がした。そっと、教室の中を覗くと、倒れた机と一緒に男子生徒が倒れ込んでいる。

 仲の良さそうな目立つ男子グループで、その中でも頭も良く、スポーツも得意な子だ。最近、父親の会社が倒産したとかで、陰口を叩かれるようになっていた。同じグループだったのに、本当は何でも出来る彼の事に嫉妬していたのだろうか。人の心情はよく分からない事が多い。

 「どうやって、返してくれるのかな?」

 他の男子生徒らも近づいていく。

 私には関係のない事だ。忘れたスマホを取りに行きたいだけ。
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