極道に過ぎた、LOVE STORY
 クラスの半分以上が、そのまま付属の高校へと進学したが、私は、もっとレベルの高い学校で勉強したかった。猛勉強して高校受験をし、見事第一志望校に合格した。

 中学校までの私立の高校とは違い、家庭層も様々だったが頭も良く、勉強熱心だった。入学当初は、それなりに声をかけてくれる子も多く、一、二度は学校の近くでお茶して帰ったこともあったが、すぐに私が轟川組長の娘だと言う噂は広まった。別に、こうなる事はわかっていたからなんとも思っていない。スマホのラインを交換した子も、初めの数日だけで連絡してくる事はなかった。グループトークも始めの数回だけだった。

 それより、下手に仲良くなって危ない事に巻き込んでしまうかもれない事の方が怖かった。私の住むヤクザの世界は怖いという自覚は年齢を増す毎に強くなっている。


 勉強は難しくなってくるが別に嫌じゃなかったし、クラスの子達は、特別仲良くもないが無視もしない。必要なことはちゃんと話してくれる。 特に困る事も、不安もなかった。


 体育の授業前の更衣室で、一瞬であったが隣で着替えている子の背中に不自然なアザが見えた。
 なんだろうか? 
 比較的おとなしい女子生徒で、特に話をした事もない。

 気にしすぎなのかと思っていたが、次の体育の授業の時には、太ももにアザが会った。

 組の男達が時々、怪我をして帰ってくる。手当を手伝う事も私の役目になっていた。男達のアザと多分同じようなアザの着き方だ。誰かにやられたのだろうか。

 私は、男達の怪我に効くとわざわざ取り寄せている軟膏を一つ鞄から取り出した。その女子生徒の手に、誰にも見られないように握らせた。彼女は、驚いたように目をまんまるにして私を見た。言葉も出ないようだ。私も何も言わなかった。

 だけど、こんな事で解決してたわけでない事は分かってる。


 そして、三者懇談会の時期が来た。うちはパパは来ない。きっと、学校に来たら皆の目があること、私の立場を気にしてるのだと思う。

 毎回のごとく、羽柴がいつもより落ち着いた紺のスーツで私の隣に座っている。羽柴は穏やかに礼儀正しく担任と接する。担任は母と同じくらいの年齢だろうか、運動部の顧問でもあり、どちらかというとサバサバした活発な女性だ。

 まだ、一年生だが進学について考えて行く事を担任から言われた。

 大学には行きたいと思っているが、ただ、将来の事となると微妙だ。この道の人間は、この道でしか生きていけない世の中なのじやないだろうか?

 「轟川さんは、将来なりたい事が決まっているの?」

 担任の言葉に、目を見開いた。その姿に、担任の方が驚いたようだ。
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