あなたが好きなのはもう一人の私【漫画シナリオ】

第三話 君の恋を応援する


○茉莉乃の部屋(朝)

部屋に鳴り響くアラーム。

スマホのアラームを止める茉莉乃。
スマホに小笠原瑠夏からの友達申請が来ているのに気がつく。
反射的に承認ボタンを押すも首を傾げる茉莉乃。

『園崎さんって鷹山裕司が好きなんだね』

早速送られて来たメッセージに思わずスマホを落とす茉莉乃。

茉莉乃「な、なんでバレてるの?」
『恋愛マスターとして園崎さんの恋を応援してあげるよ』
続いて瑠夏から来たメッセージに戸惑う茉莉乃。

茉莉乃「確かに瑠夏王子の協力があれば、私も裕司と恋人になれるのかな」
茉莉乃は髪をくしゃっと手で握ると首を振る。

茉莉乃「上手くいくわけないよ。裕司にとって私は小さい頃、仲良かっただけの女の子」

茉莉乃が階段を降りると、喜美子は茉莉乃から目を背け足早に家を出て行く。

○ダイニングルーム(朝)

テーブルの上に朝食が並ぶ。

茉莉乃「お兄ちゃん、なんか私、お母さんに無視された気がする」
智也「気のせいだろ。それにしても、昨晩は夜遊びなんかしてどうしたんだ?」
茉莉乃「えっ? 夜遊び?」
智也「昔馴染みの鷹山裕司君が一緒だったから安心と思っているのかもしれないけれど、思春期の男をあんまり信用しちゃダメだぞ。頭ん中ろくな事考えていないんだから」
茉莉乃「裕司は医者になる夢に向かって真っ直ぐに頑張ってるよ」

智也は微笑むと茉莉乃の前に5枚のテストを出してくる。

茉莉乃「わっ! 見ないで」
智也はその中の英語の満点のテストを見せてくる。

智也「出来てるじゃん。満点、凄いよ。茉莉乃は将来通訳とかになりたいの?」
茉莉乃「別に。お兄ちゃんは弁護士になるのが夢だったの?」
智也「いや、死んだ母さんが弁護士だったから何となく」
茉莉乃「自慢の子だね」
茉莉乃は小さく呟くとほとんど食事に手をつけずに席を立った。

○教室(朝)

茉莉乃が入ってくるなり、目を逸らす裕司と近づいてくる瑠夏。

瑠夏「お前、メッセージ無視するなよ。ちょっとツラ貸せ」
瑠夏が茉莉乃の手を引き教室を出るのを見て、女子たちの悲鳴のような声が上がる。

茉莉乃は誰もいない階段の踊り場にまで連れて来られる。

○階段の踊り場

茉莉乃「瑠夏王子、もうすぐ朝の会が始まるよ」
瑠夏「園崎さんは鷹山裕司が好きなの?」

まっすぐに茉莉乃を見据え訪ねてくる瑠夏。
茉莉乃は思わず静かに頷く。

瑠夏「どこがいいんだか、あんな隠キャ」
茉莉乃「瑠夏王子ってモテるだけあって、人の心の機微に敏感なんだね。まさか、私の気持ちがバレてるとは思わなかったよ」
瑠夏「はぁ、協力してやるよ。このままだと二人は平行線。俺の応援があればお前は裕司と恋人になれるぜ」
瑠夏は茉莉乃の肩を叩きながら囁く。

茉莉乃「裕司と恋人に…⋯」

茉莉乃の呟きに瑠夏は何とも言えない顔をする。

裕司「瑠夏、茉莉乃、そろそろ朝の会はじまるぞ」
裕司が現れ茉莉乃は思わず顔を赤くする。

茉莉乃は瑠夏の学生服の裾を引っ張り、耳元で囁く。

茉莉乃「5年ぶりくらいに裕司に名前呼ばれた。もしかして、瑠夏王子のお陰? もう、協力してくれてるんだ」
瑠夏「はぁ⋯⋯茉莉乃! お前、今日の放課後あけとけ」
茉莉乃は瑠夏から自分の名前を呼んだ事に驚き目を丸くした。

○教室(放課後)

西田里美「茉莉乃、部活行こう」
茉莉乃「う、うん」
瑠夏「今日はこいつ部活休みだから。俺とデートなの!」

里美が驚いたように茉莉乃の顔を覗き込む。

茉莉乃「デートじゃないよお!」
茉莉乃は教室に残っている裕司を気にしながら、瑠夏に強引に連れられて行くのだった。
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