あなたが好きなのはもう一人の私【漫画シナリオ】

第四話 裕司にだけ女の子と思って貰えれば十分なの

○繁華街(昼)

瑠夏に手を引かれている茉莉乃。
茉莉乃「さっき、なんでデートなんて言ったの? 裕司に誤解されたかも」

茉莉乃の不安げな声に瑠夏は振り向くとニヤリと笑う。

瑠夏「競争相手のいる女だと思わせる為! 男は基本狩猟民族だから」
茉莉乃「はぁ、でも、瑠夏王子も彼女とかに誤解されるんじゃ」
瑠夏「彼女なんていない。俺、ステディーな相手は作らず遊びたい派だから」
茉莉乃「瑠夏王子、清々しいほどクズなんだね」

茉莉乃の言葉に瑠夏が笑う。

○美容院

茉莉乃「美容院って制服で入って良いの?」
瑠夏「誰に禁じられてるんだよ」

瑠夏が楽しそうに笑うのを見て、茉莉乃はなぜか懐かしい気持ちを覚える。

美容師の女性「瑠夏、いらっしゃい」
瑠夏「母さん、この子綺麗にしてやって」
茉莉乃は美容師の女性と瑠夏を見比べる。

茉莉乃「小笠原君のお母様、初めまして。園崎茉莉乃と申します。本日は予約もしておりませんし、ご迷惑なので失礼します」
立ち去ろうとする茉莉乃を引き止める瑠夏。

茉莉乃は瑠夏に小声でいう。

茉莉乃「私の芋臭さをなんとかしてくれようとしているのはありがたいけれど、私、今日お金持ってないよ」
茉莉乃は美容院の内装の高級感に不安を感じていた。

瑠夏「そんなのいらねえよ。応援するって言っただろ」

美容師の女性「茉莉乃ちゃん。宜しくね。小笠原真央です。張り切らせて貰うわよ。瑠夏が初めて女の子を連れて来たんだもの」
茉莉乃は真央に強引に席に座らせられる。

瑠夏「ふわっとした感じを出すためにパーマをかけても可愛いと思うんだけど」
茉莉乃「待って! パーマかけても良いの?」
瑠夏「ダメって誰かに言われたの?」
クスクス笑う瑠夏に茉莉乃は首を振る。

一つ結びのゴムを解かれる茉莉乃。

真央「綺麗な髪ね」
茉莉乃「ありがとうございます」
瑠夏「髪もピンクベージュとか、柔らかい雰囲気の出る色に染めて」
茉莉乃「えっ? 髪染めて良いの?」
瑠夏「校則的には問題ないだろ」

瑠夏はまた楽しそうに笑っている。
茉莉乃が釣られて微笑むと瑠夏は目を逸らした。

真央「瑠夏は変身した茉莉乃ちゃんのイメージが出来てそうね。美容師に向いてるんじゃない?」
瑠夏「あんたと同じ仕事なんて真っ平御免だよ」

突然、冷たい表情になった瑠夏に、気まずそうな顔をする真央。

○洋服屋

茉莉乃「瑠夏王子、美容院のお金は明日持ってくるから。それと、洋服はいらないよ。どうせ平日は制服だし」
瑠夏「美容院のお金はいらないし、服も俺が買う。応援するって言っただろ。休日デート用の服買うぞ」
茉莉乃「裕司とデートなんて出来るようになるのかな? 休日に会う約束ができても気合の入った服だと引かれない?」
瑠夏「自分と会うのに気合を入れて来てくれたと思わせなきゃダメだろ」
茉莉乃「勉強になります」

茉莉乃が素直にコクコク頷いているのを見て、思わず瑠夏は彼女の頭を撫でる。
茉莉乃の脳裏に幼少期誰かに同じように頭を撫でられた記憶が蘇る。

茉莉乃「なんか私たち昔からの友達みたいだね」
瑠夏「茉莉乃みたいな地味な友達がいた覚えはないけどな」
茉莉乃「地味で悪かったわね」
瑠夏「俺が人目を引く女にしてやるから安心しろ」
茉莉乃「人目なんて引かなくて良い⋯⋯私は裕司にだけ女の子と思って貰えれば、それで十分なの!」

瑠夏は面白くなさそうに茉莉乃に白いシフォンワンピースを渡してくる。

茉莉乃「こんなの可愛すぎて試着するのも恥ずかしい。丈も短過ぎ⋯⋯」
瑠夏「白のミニスカートは似合ってたよ。茉莉乃は足も綺麗だし」
茉莉乃「えっ?」

茉莉乃は思わず受け取った服で足を隠しながら試着室に向かう。

○試着室

茉莉乃は鏡に映った白いシフォンワンピース姿の自分を見ながら溜息を吐く。

茉莉乃「いかにもデート着。これを裕司の前で着るのは無理⋯⋯それにしても、瑠夏王子は白いミニスカート姿の私をどこで見たんだ?」

瑠夏「茉莉乃? 着れた? 開けて良い?」
茉莉乃「は、はーい!」
ゆっくりと開けられる試着室のカーテン。
その先にいた人物を見て、茉莉乃は目を丸くする。
瑠夏の隣には制服姿の裕司がいた。

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