あなたが好きなのはもう一人の私【漫画シナリオ】

第五話 突然のプレゼント

○洋服屋(昼)

茉莉乃「裕司、何でここに」
裕司「瑠夏に呼ばれて⋯⋯」
茉莉乃「二人は仲良いの?」
裕司「仲良いも何も瑠夏は⋯⋯」
裕司が口を開いたところを瑠夏が手で遮る。

瑠夏「やっぱり白が似合う。会計済ませたから、これから二人でデートに行って来いよ」
茉莉乃、裕司「「デート!?」」

茉莉乃と裕司は顔を真っ赤にして俯いて黙り込む。

茉莉乃は瑠夏の腕を引っ張り少し離れたところに連れて行くと小声で囁く。
その様子を面白くなさそうに見つめる裕司。

茉莉乃「いきなり二人でデートとか絶対に無理。せめて予行練習させて」
瑠夏は茉莉乃の必死な形相に吹き出すと、裕司に手を振る。

瑠夏「今日は茉莉乃、俺と二人がいいってさ。じゃあな」

瑠夏の思いがけない言葉に口をパクパクさせる茉莉乃。
瑠夏は茉莉乃の手を引き、洋服屋を出て行った。
二人が出て行った先を睨みつける裕司。


○オシャレなカフェ(昼)

瑠夏「このカップル限定パフェください」
ウェイトレス「かしこまりました」

茉莉乃は周囲の女の子たちが瑠夏を見てヒソヒソしているのを感じ取る。
皆が振り向くイケメンの瑠夏と地味な自分の組み合わせが不釣り合いと思われているようで恥ずかしい茉莉乃。

茉莉乃「練習とはいえ、私とカップルなんて思われるのは嫌じゃない?」
瑠夏「どうして、可愛い彼女を連れてて鼻が高いけど?」

茉莉乃は思わず瑠夏の言葉に真っ赤になり顔を手で覆う。

瑠夏「その顔すげえ可愛い。裕司の前でもやってみたら」
茉莉乃「顔隠してるのに見えるの? 透視?」

茉莉乃は思わず手を退けると目の前に瑠夏がいない。

急に首筋に触れる指を感じ茉莉乃は縮こまった。
茉莉乃「な、何?」
瑠夏「タグ切った。気持ち悪いだろ」
茉莉乃「ネックレス⋯⋯」
瑠夏「プレゼント」


茉莉乃は胸元のピンクのハート型の煌めく宝石に目を見開く。

茉莉乃「何これ! ピンクダイヤモンド? こんな高価なもの貰えないよ」
瑠夏「ローズクォーツ! 別名ラブストーン。恋愛成就の石だよ。ダイヤモンドは裕司に買って貰え!」
茉莉乃「⋯⋯なんか、瑠夏王子って本当に王子なんだね。モテるの分かる気がするよ。タグ切ってくれてありがとう。気持ち悪かったんだ」
瑠夏「俺は茉莉乃がモテない理由が分かる気がする。ここはネックレスのお礼を言えよ」

瑠夏が楽しそうに笑っていて、茉莉乃もつられて笑う。
そこにカップル限定の大きなパフェが運ばれて来る。

茉莉乃「凄く美味しそう」
瑠夏「どうぞお食べ。俺、甘いもの苦手だから」
茉莉乃は手を合わせて目を輝かせながら、パフェを食べ始める。

茉莉乃「瑠夏王子はどうして彼女を作らないの? モテるのに」
瑠夏「女にうんざりしてるから。俺の家、母親の不倫が原因で離婚したの。母親は不倫相手と再婚したかったけれど、コブツキは嫌だって振られた。父親も不倫するような女の子供はいらないって言ってさ⋯⋯」

茉莉乃は瑠夏の話を聞くなり涙が溢れ出して止まらなくなる。

茉莉乃「居場所がないって辛い⋯⋯よ⋯⋯ね」
瑠夏「別に俺は居場所がないなんて思ってないし、なんでそんなに泣くんだよ」

茉莉乃は瑠夏が困って慌てふためいているのを見て必死に涙を止めようとする。

茉莉乃「このパフェが美味しくて涙が止まらない⋯⋯」
瑠夏「じゃあ、もう一個食べておくか?」
茉莉乃「流石に太る」

瑠夏は茉莉乃の泣き笑い顔を愛おしそうに見つめる。


瑠夏「茉莉乃が今、居場所がないって感じてたりする?」
茉莉乃「エ、エスパー?」

茉莉乃は何不自由ない家庭に生まれて恵まれていると思われている自分の孤独に気が付かれたようで驚いた。

瑠夏「話してみろよ。裕司には話せないだろ」
茉莉乃「裕司どころか、誰にも話せないよ。でも、瑠夏王子なら」

茉莉乃に潤んだ瞳で見つめられ、瑠夏は時が止まったような感覚を覚えていた。
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