酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
第六話 レンタルダーリン桐生葵に合コンに行くんだとは言えなかった
朝の始まりは「おはようのキス」の攻防戦。
一日の最後は柔らかな声音で「おやすみ」を伝えてもらって一緒に眠る。
それがここ最近の私の一日の始まりと終わり。
今日の朝食の食後の飲み物はコーヒーだった。ほんのり甘くてミルクがたっぷり。私好みの砂糖とミルクの量をすでに把握している葵さんはどこまで完璧なんだろう。

「そうだ、葵さん」
「なあに?」
「今日の晩ごはんなんだけど、一緒に食べられないの。お友達と食事に行くことになっていて……」

当日の朝に報告して申し訳ないのだが食事に行くことが決まったのは葵さんと出会う前だ。このところバタバタしていて約束をすっかり忘れていたところにタイミングよく「今日の予定、覚えてる?」と友人からメッセージが届いた。
「お友達?」と小首を傾げた彼に大学で出会った女の子の友人だと説明する。きっと葵さんのことだから快く頷いてくれる――と思ったのに、彼はほんの少し眉を寄せて困り顔で笑った。

「そっか、うん。楽しんでおいでね」

その違和感を尋ねずにはいられない。

「葵さん? どうかした?」
「ん? なんでもないよ。ああそうだ、お店の場所と名前を教えてほしい」

そんなのお安い御用だ。すぐさまメモ用紙とペンを用意して、昨日やりとりした友人とのメッセージ画面に書かれたお店の名前と場所を書いていく。

「飲みに行って、色々喋って食べて……あの子のことだから……二十三時までには帰ってくるね」
「わかった。何かあったらすぐに連絡するんだよ?」
「うん、葵さんも何かあったら連絡してね。私、飛んで帰るから!」

葵さんが作ったごはんが食べられないのは残念だけど、あの子がどうしてもごはんに行きたいと言っていたから仕方ない。ちょっと乗り気じゃない理由もちゃんとある。頑張るのはあの子で、私はごはんを食べるだけだ。
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