酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
家を出る時間まで葵さんと一緒にテレビを見たり、雑誌を読んだりして過ごした。葵さんと一緒に何かするとあっという間に時間が経ってしまう。もっと一日が長ければいいのにと思うほどだ。
玄関先まで見送りに来てくれた葵さんに手を振って家を出た私は、待ち合わせ場所の駅へ電車を乗り継いで向かう。
久しぶりに会う友人を待ち合わせ場所で見つけて、再会を喜んだあと彼女の全身を見て拍手を送った。

「今日気合入ってるね」
「当然。今日こそあたしは彼氏を作るんだから!」
「私は隣で料理を食べてるだけでいいんだよね?」
「全然オーケー。いてくれるだけで心強いわ、あたしの親友!」
「任せて! 良いところをたくさん相手にアピールしてあげるからね!」

固く握手を交わした私達は、駅前から戦場へ赴いた。いや、私にとってはただの晩ごはんだけど、この子にとっては大事な戦場だ――合コンという名の。
ここ最近、いつにも増して「彼氏が欲しんだよ~」と、ことあるごとにメッセージを送ってくる友人のために私が付き合ってあげることになったのだが、行きたくないと最後まで渋って「じゃあ、あんたの旦那の写真送りなさい」なんて言われたら断れない。友人が指している旦那とは葵さんのことだ。話の流れでレンタルダーリンと契約したと軽く説明してから、やたらと葵さんの写真を要求される。
合コンって行ったことないんだけど、どんな感じなんだろう。友人と二人でごはんなら大歓迎なんだけどなぁ。今日は初対面の男性が二人来る。でも私はただおいしいごはんが食べられればそれでいい。いや、友人に彼氏ができるお手伝いはできるだけするけれど自信はない。うまくいきますように。
駅前から大通りに向かって、飲み屋の立ち並ぶ一角に約束のお店はある。ビルのエレベーターを上がった先の全席個室居酒屋だ。相手は友人の知り合いの男性から紹介された二人だとかなんとか言っていた。男性陣は先にお店で待っている。気合を入れて頬をぺちんとたたいている友人の横で私の頭の中は居酒屋のメニューでいっぱいだった。さて、何を食べようかなぁ。

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