酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
イルミネーションデートをした翌日は葵さんと一緒に晩ごはんのお買い物に行く約束をしていた。
外に用事があるからと午前中から家を留守にしていた葵さんと自宅の最寄り駅で待ち合わせだ。
改札の前に葵さんを見つけて、ぱっと表情を明るくして小走りに彼に駆け寄った。葵さんは「ただいま」って微笑んで、私の左手を取ってくれる。優しく握られた手をむにむにと遊びながら、私達は近くのスーパーまで歩きだした。
なんとなんと、今日の晩ごはんはお鍋なんだ! 何のお鍋にしようかって相談しながらお買物しようって葵さんが言ってくれたから、今からスーパーの中を回って何鍋にするか決める。でも私のおなかはもう決まっている。
「葵さん! キムチ鍋が食べたい!」
「わかった。じゃあまずはキムチから見に行こうか」
二つ返事でオーケーしてくれた葵さんが好きすぎて「好き……」って声を漏らしたら「俺も」って言ってくれたんだけど、今のはキムチ鍋が好きってことかな。私が好きってことかな。とにかく嬉しくてルンルン気分だ。なんだか、こうして二人で買い物をしていると本当に新婚さんみたいで楽しい。ちらりと見た葵さんと目が合えば、彼もどこか嬉しそうに目を細めている。こんな時間が幸せだ。
材料を買い終えレジに向かい、持ってきたエコバッグに詰めれば、彼は「当然だ」と言わんばかりに袋を手に取った。お鍋の材料と明日の朝ごはんの材料も買ったから、バッグが二つ分だ。葵さんの両手がエコバッグで埋まってしまった。
「帰ろうか」と相好を崩す彼に頷いて、スーパーを出て帰路に着く。二人並んでスーパー帰りにいつも通る道。ただ一つ違ったのは、葵さんの両手が袋を持つことで塞がって手を繋げないことだ。
「葵さん、半分持つよ」
「いや、大丈夫だよ。俺は男だからこれくらい任せて」
なんとも格好良い王子様のようなスマイルで断られてしまった。うう、私の気持ちが伝わらなかった。遠回しに言うんじゃなくて……ちょっと照れくさいけど、はっきり言うしかないな。葵さんの右手に、そっと触れると「どうしたの?」と彼は立ち止まった。大きな手に触れる私の手に力が籠る。
「て、を。繋ぎたいから、半分、持ちたい、です」
葵さんが、かちん、と固まってしまった。ど、どうしたんだろう。
少し動揺した私が彼の名前を呼べば、どうやら彼は呼吸まで止めていたようで、うつむいて顔を逸らした。でも身長差からうつむいても表情がはっきりわかる。何かをかみしめている。
「君はどうしてそう、いつも可愛いんだ」
「え!?」
次いで彼は、幸せそうに目元を緩めて微笑んだ。お世辞でも、私のことを可愛いなんて言うの葵さんくらいなんだけど、可愛いって言ってもらえて嬉しい。でも恥ずかしい。
「じゃあこっちの軽い方を持って。これで手が繋げるよ」
「うん!」
右手にそのエコバッグを持った私は、空いた左手で葵さんと手を繋いで再び歩き出す。ふふ、私は今、上機嫌である。そんな私を見下ろして葵さんが話し始めた。
「さっき、スーパーで買い物していたときにね。新婚みたいだって思ったんだ」
照れたようにはにかんだ葵さんに今度は私が固まる番だった。きゅっと唇を引き結んで、心の中でわああと絶叫する。私と同じこと思ってくれてた!
「葵さんが可愛すぎて辛い……」
「か、可愛い? 君はたまに俺を可愛いって言ってくれるけど、俺的には格好良いって言われたいな……」
「違うんだよ葵さん。これはすごいことなんだよ」
「すごいこと?」
「めちゃめちゃ格好良い! 何をしても格好良い! ってその人のことを思っているとします」
「あ、ああ」
「でも、その人の格好悪いところを見てしまうと幻滅しちゃったりすることがあります。うわ、格好悪いって」
「……そう、だね」
「でも、可愛いは、すごい。その人を可愛いと思っていると、もう、何をしても可愛い! 許せちゃう!」
「ああ、確かに俺も君だったら何をしていても可愛いと思うから……それこそ何をしていても全部が可愛い」
葵さんが「そういうことか」と、私が彼に対して可愛いと言う言葉を使う理由を理解してくれたようだ。
「君にとって、俺に対する可愛いは誉め言葉なんだね」
「うん! きゅんきゅんしてるってこと!」
「格好良いとは、思ってくれていない……?」
「お、思ってるよ。だって、葵さんは素敵な人で……もう、全部大好きで格好良い……って面と向かって言うと恥ずかしい……!」
「照れる君も可愛い。今きゅんとした」
さらりとそんなことを言ってみせた葵さんに膝から崩れ落ちるかと思った。葵さん、ずるい人だ。格好良いし可愛いし、本当にずるい。
ああ、顔が熱い。冬の夜風がちょうどいいや。
外に用事があるからと午前中から家を留守にしていた葵さんと自宅の最寄り駅で待ち合わせだ。
改札の前に葵さんを見つけて、ぱっと表情を明るくして小走りに彼に駆け寄った。葵さんは「ただいま」って微笑んで、私の左手を取ってくれる。優しく握られた手をむにむにと遊びながら、私達は近くのスーパーまで歩きだした。
なんとなんと、今日の晩ごはんはお鍋なんだ! 何のお鍋にしようかって相談しながらお買物しようって葵さんが言ってくれたから、今からスーパーの中を回って何鍋にするか決める。でも私のおなかはもう決まっている。
「葵さん! キムチ鍋が食べたい!」
「わかった。じゃあまずはキムチから見に行こうか」
二つ返事でオーケーしてくれた葵さんが好きすぎて「好き……」って声を漏らしたら「俺も」って言ってくれたんだけど、今のはキムチ鍋が好きってことかな。私が好きってことかな。とにかく嬉しくてルンルン気分だ。なんだか、こうして二人で買い物をしていると本当に新婚さんみたいで楽しい。ちらりと見た葵さんと目が合えば、彼もどこか嬉しそうに目を細めている。こんな時間が幸せだ。
材料を買い終えレジに向かい、持ってきたエコバッグに詰めれば、彼は「当然だ」と言わんばかりに袋を手に取った。お鍋の材料と明日の朝ごはんの材料も買ったから、バッグが二つ分だ。葵さんの両手がエコバッグで埋まってしまった。
「帰ろうか」と相好を崩す彼に頷いて、スーパーを出て帰路に着く。二人並んでスーパー帰りにいつも通る道。ただ一つ違ったのは、葵さんの両手が袋を持つことで塞がって手を繋げないことだ。
「葵さん、半分持つよ」
「いや、大丈夫だよ。俺は男だからこれくらい任せて」
なんとも格好良い王子様のようなスマイルで断られてしまった。うう、私の気持ちが伝わらなかった。遠回しに言うんじゃなくて……ちょっと照れくさいけど、はっきり言うしかないな。葵さんの右手に、そっと触れると「どうしたの?」と彼は立ち止まった。大きな手に触れる私の手に力が籠る。
「て、を。繋ぎたいから、半分、持ちたい、です」
葵さんが、かちん、と固まってしまった。ど、どうしたんだろう。
少し動揺した私が彼の名前を呼べば、どうやら彼は呼吸まで止めていたようで、うつむいて顔を逸らした。でも身長差からうつむいても表情がはっきりわかる。何かをかみしめている。
「君はどうしてそう、いつも可愛いんだ」
「え!?」
次いで彼は、幸せそうに目元を緩めて微笑んだ。お世辞でも、私のことを可愛いなんて言うの葵さんくらいなんだけど、可愛いって言ってもらえて嬉しい。でも恥ずかしい。
「じゃあこっちの軽い方を持って。これで手が繋げるよ」
「うん!」
右手にそのエコバッグを持った私は、空いた左手で葵さんと手を繋いで再び歩き出す。ふふ、私は今、上機嫌である。そんな私を見下ろして葵さんが話し始めた。
「さっき、スーパーで買い物していたときにね。新婚みたいだって思ったんだ」
照れたようにはにかんだ葵さんに今度は私が固まる番だった。きゅっと唇を引き結んで、心の中でわああと絶叫する。私と同じこと思ってくれてた!
「葵さんが可愛すぎて辛い……」
「か、可愛い? 君はたまに俺を可愛いって言ってくれるけど、俺的には格好良いって言われたいな……」
「違うんだよ葵さん。これはすごいことなんだよ」
「すごいこと?」
「めちゃめちゃ格好良い! 何をしても格好良い! ってその人のことを思っているとします」
「あ、ああ」
「でも、その人の格好悪いところを見てしまうと幻滅しちゃったりすることがあります。うわ、格好悪いって」
「……そう、だね」
「でも、可愛いは、すごい。その人を可愛いと思っていると、もう、何をしても可愛い! 許せちゃう!」
「ああ、確かに俺も君だったら何をしていても可愛いと思うから……それこそ何をしていても全部が可愛い」
葵さんが「そういうことか」と、私が彼に対して可愛いと言う言葉を使う理由を理解してくれたようだ。
「君にとって、俺に対する可愛いは誉め言葉なんだね」
「うん! きゅんきゅんしてるってこと!」
「格好良いとは、思ってくれていない……?」
「お、思ってるよ。だって、葵さんは素敵な人で……もう、全部大好きで格好良い……って面と向かって言うと恥ずかしい……!」
「照れる君も可愛い。今きゅんとした」
さらりとそんなことを言ってみせた葵さんに膝から崩れ落ちるかと思った。葵さん、ずるい人だ。格好良いし可愛いし、本当にずるい。
ああ、顔が熱い。冬の夜風がちょうどいいや。