酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
第二話 レンタルダーリン桐生葵に触れられた唇が溶けたような気がした
「よろしくね。俺の奥さん。いっぱい愛してあげるから」

確かにそう言われた。そして、落ちない女はいないだろうなってくらいの優しく甘い微笑みを向けられて、ぎゅううん! なんて心臓が唸った結果、私はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
なんてことだ。効果は抜群だ。イケメン恐ろしい。国宝級のイケメンに微笑まれたら心臓って一瞬止まるんだな。
バクバクと太鼓をたたいているような音を立てて心臓が鳴っている。
そんなときだ、布切れの音が聞こえてきたのは。
私のすぐ傍のベッドが少し沈んで、無意識に閉じていた瞼を持ち上げたら目の前にその国宝級イケメンのご尊顔があった。
するりと頬を撫でた大きな手、近づく顔。少し尖らせた唇。まるで、今からキス、するみたいに。

「ひええええ!」

化け物でも見たみたいな声を出してしまった。両手で顔を覆って、でもご尊顔は見たかったから指の隙間から様子を窺って。目の前の彼は目を真ん丸に見開いてきょとんとしている。そんな表情ですら絵になってしまう。

「な、ななななにを」
「何って、おはようのキス、だ」
「おおお、おぅ、おはようのキス!?」

あまりにも衝撃的な展開すぎて未だかつてない動揺に襲われていた。

「手、退けて?」
「無理です!」
「このままじゃ、おはようのキス、できないよ?」
「心臓が、止まってしまうので、これ以上は……! どうか! どうかご勘弁を!」

もはや命乞いに等しかった。だって、私はまだ生きていたい。イケメンにときめきで撃ち抜かれて寿命を終えるなんて、親になんて言われるか。あんたもうちょっとマシな死に方できなかったのかとか言われそう。いや、ときめきで撃ち抜かれて死ぬってなんだ。そんな死因聞いたことないわ。

「――ふっ、ははは。もう、しょうがないなぁ。うん、わかった。じゃあ今日はここにしておこうか」

さっきまでとろとろに甘い表情ばかり浮かべていたのに、私の言葉に対して吹き出して笑った瞬間はとっても純粋に楽しそうに見えた。その笑顔のギャップに見惚れていると、ちゅ、と音を立てておでこに柔らかい感触が触れる。
あ、あ、わああああ! ってこの世の終わりみたいに叫んだら、おなかを抱えて笑われた。
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