酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
現在自宅になっているマンションから最寄り駅へ。そこから電車で一時間半程かけて行った先にお店があるらしい。電車の乗り継ぎでもスマホを駆使して、電車は何とか問題なくクリアできたのだが肝心のお店までの道で迷子になってしまった。あっちかな? こっちかな? とスマホの地図を頼りになんとかお店に辿り着いた。
ここはオーナーさんが作るオリジナル雑貨を取り扱うお店らしい。ネットでサイトを見たとき、作品集の中のラインナップにジッポライターのケースがあった。しかも、煙草の箱も一緒に入れられるタイプのもので――。

「あった!」

思わず声が出て慌てて口元に手を当てた。お店の中はお客さんの男性が二人と男性オーナーさんが一人。サイトで見たケースが売っていたのを見て感動やら興奮やらでつい声が出てしまった。すみませんという意味を込めてオーナーさんに会釈して、箱に入って売られているケースを手に取る。
しっとりとした黒い革のセクシーな色合いが、まるで葵さんみたいだと思って気になったもの。実物はもっと素敵な品だった。
これを買おう。そう決めてオーナーさんのところに向かった。
きちんとプレゼントの包装をしてもらって、お会計をして、大切にバッグに入れてお店の外に出る。ここでやっと気づいたのだが、外はもう真っ暗だった。
家を出たのがお昼過ぎ。電車に乗って一時間半。そこから道に迷って、お店に辿り着いて……ここからまたマンションに帰るまで――と考えたところでさっと血の気が引く。これはとっても遅くなってしまうかもしれない! 素早くスマホを取り出して、お店から駅までの道をマップに表示し、帰りは迷わないように気をつけて歩く。
電車に乗り込んで揺られること約一時間。次でやっと見知った駅に辿り着く、というところで葵さんに「おでかけしていて遅くなります」という連絡をしようとしたのだが、メッセージアプリで文字を入力している間にバッテリーが切れてしまった。画面は真っ暗。うんともすんとも言わない。
不幸中の幸いは、見知った駅まで辿り着いているから最寄り駅まで行ってしまえばちゃんとマンションまでの道は覚えていて、家には帰れるということだ。
くるくるとおなかの虫が鳴く。おなか空いたなぁ。帰ったら葵さんと一緒にごはんを作って……いや、もう葵さん一人で作ってしまっているかもしれない。
早く、会いたいな。

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