酔った勢いで契約したレンタルダーリンと期間限定の夫婦生活始めます!
第三話 レンタルダーリン桐生葵が「良い子良い子」してくれるらしい
私はソファの上にまるで借りてきた猫のように大人しくちょこんと座って葵さんがテレビのリモコンを取って戻ってくるのを待った。
葵さんは私のお隣に座るんだろうなぁというのはなんとなく察していたけれど、思っていた以上の近い距離に腰を下ろしたので、ぴゃっと小さく肩が跳ねる。か、身体がくっついている。
「うーん、何を見ようか」
「は、はい。えーと」
リモコンを操作してインターネット配信の映画作品の一覧を見せてくれる。たくさんの作品が配信されていてどれを見ようか迷うところだけれど、私は瞬時に「この作品!」と意識を持っていかれた。テレビで放送されていたときに見たのがきっかけで好きになった映画だ。私の一番の推し映画。生まれ変わって子犬になってしまった女の子が、大好きな相手である飼い主に一生懸命に愛を叫ぶお話。
「あ、これなんてどうだい? 子犬の」
「え!」
私は何も言っていないのに、葵さんからその映画を選んで勧めてくれるなんて思っていなかったから変に大きな声が出てしまった。なんでもないとぶんぶん首を横に振ってから、またぶんぶんと首を縦に振りなおして「これにしましょう」と伝える。
「うん。じゃあこれ、再生するね」
大好きな映画って言っても観るのは久しぶりだ。内心うきうきとテンションを上げながら画面を見ていたから、葵さんがまるで私の肩を抱くように背もたれに腕を置いたなんてこと映画が終わるまで全然気づけなかった。
映画は可愛いほのぼのするお話から始まり、最後のシーンは子犬の女の子と一緒に私もぼろぼろと泣いてしまう。それに気づいた葵さんが優しい顔で微笑んで私の涙をティッシュで拭ってくれたんだけど、その触れ方があまりにも甘くてくすぐったくて涙が引っ込んでしまった。でもやっぱり映画を見たら泣いちゃう。
とうとう映画が終わり、エンドロールがすべて流れたところで葵さんが私の頭をぽんぽんと撫でた。
「君は心が優しい子だね」
「ぇ、えと」
突然そんなことを言われて戸惑ってしまった。心が優しい子だね、なんて初めて言われた。
「あ、そうだ。お昼ごはんは映画の最後に出てきたオムライスにしようか。真似して作ってみたいんだ」
「お、お、オムライス! あのオムライス作れるんですか!?」
「任せて。君のためだったら俺は何だってしてあげるからね」
「あ、葵さん。格好良い……!」
そんなにさらっと格好良いことを言えるなんて! それに葵さんのお料理スキルだったら絶対にあのオムライスを再現できるって確信がある!
一度は食べてみたいなぁと思っていた映画の中のオムライスが食べられるんだと思うと、まだ食べてもいないのに頭の中で「おいしい!」ってすでに食べた感じでもう一人の私が叫んでいた。
葵さんは私のお隣に座るんだろうなぁというのはなんとなく察していたけれど、思っていた以上の近い距離に腰を下ろしたので、ぴゃっと小さく肩が跳ねる。か、身体がくっついている。
「うーん、何を見ようか」
「は、はい。えーと」
リモコンを操作してインターネット配信の映画作品の一覧を見せてくれる。たくさんの作品が配信されていてどれを見ようか迷うところだけれど、私は瞬時に「この作品!」と意識を持っていかれた。テレビで放送されていたときに見たのがきっかけで好きになった映画だ。私の一番の推し映画。生まれ変わって子犬になってしまった女の子が、大好きな相手である飼い主に一生懸命に愛を叫ぶお話。
「あ、これなんてどうだい? 子犬の」
「え!」
私は何も言っていないのに、葵さんからその映画を選んで勧めてくれるなんて思っていなかったから変に大きな声が出てしまった。なんでもないとぶんぶん首を横に振ってから、またぶんぶんと首を縦に振りなおして「これにしましょう」と伝える。
「うん。じゃあこれ、再生するね」
大好きな映画って言っても観るのは久しぶりだ。内心うきうきとテンションを上げながら画面を見ていたから、葵さんがまるで私の肩を抱くように背もたれに腕を置いたなんてこと映画が終わるまで全然気づけなかった。
映画は可愛いほのぼのするお話から始まり、最後のシーンは子犬の女の子と一緒に私もぼろぼろと泣いてしまう。それに気づいた葵さんが優しい顔で微笑んで私の涙をティッシュで拭ってくれたんだけど、その触れ方があまりにも甘くてくすぐったくて涙が引っ込んでしまった。でもやっぱり映画を見たら泣いちゃう。
とうとう映画が終わり、エンドロールがすべて流れたところで葵さんが私の頭をぽんぽんと撫でた。
「君は心が優しい子だね」
「ぇ、えと」
突然そんなことを言われて戸惑ってしまった。心が優しい子だね、なんて初めて言われた。
「あ、そうだ。お昼ごはんは映画の最後に出てきたオムライスにしようか。真似して作ってみたいんだ」
「お、お、オムライス! あのオムライス作れるんですか!?」
「任せて。君のためだったら俺は何だってしてあげるからね」
「あ、葵さん。格好良い……!」
そんなにさらっと格好良いことを言えるなんて! それに葵さんのお料理スキルだったら絶対にあのオムライスを再現できるって確信がある!
一度は食べてみたいなぁと思っていた映画の中のオムライスが食べられるんだと思うと、まだ食べてもいないのに頭の中で「おいしい!」ってすでに食べた感じでもう一人の私が叫んでいた。