私が聖女でヒロインです！？いいえ、私はモブZ希望します！

　確か、ここの脇道を抜ければ校舎に着くはずだ。

　私はゲームの背景のスチルの記憶を頼りに足を進めた。

　辺り一面は草花が鬱蒼と茂り、ここだけ自然に溢れたような綺麗な空気が、流れているようにも感じられて心地がよく感じる。

　枝の葉の隙間から零れる日差しに、可愛らしい小鳥の鳴き声と、不思議な色の羽をした蝶がパタパタと羽を羽ばたかせ自由に舞っているよう。

　まるでそこだけ切り取られた空間にいるような。

　キョロキョロしながら歩いていたのが行けなかったのかも知れない。

　声を掛けられるまで、全く気が付かなかった。

　「···、キミは、新入生かな？見ない顔だね」

　木の根元で静かな、柔らかな声が私に届いた。

　ハッとしたように視線を向ければ、青みがかった濃紺の髪に金色の瞳が印象的な男子生徒が視界に入った。

　「！···ご、ごめんなさい！私、」

　ドキッと心臓が跳ねた。

　反射的に謝罪が口から飛び出して、私は走り出そうと身を翻した。