エリート商社マンはわたしの王子様~見てるだけで幸せだった推しの恋愛対象がわたしってどういうことですか?~
呆然と入り口を見ながら、助かった…と思った。

息がまだ上がっているけど、テーブルから降りて、息を整える。
髪はボサボサ。ブラウスのボタンが二つほど外れているし口紅は顔に付着してるし、最悪だ。

それでもホッとした。

「長谷川、お前、自分がやったことをわかっているのか」

と、お父さんの怒りに満ちた声が静かな朝の研究室にこだました。

横で喚いていた桐生さんが、スッと黙った。

「いや…僕は…」

「長谷川がこんなことをする人間だと知っていたらわたしはお前に娘との結婚話を持ちかけなかっただろう」

「え?娘?」

桐生さんが怪訝な顔でお父さんを見ている。

というか、結婚話って何?
なんでこの人がわたしのこと娘って知ってるの?
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