エリート商社マンはわたしの王子様~見てるだけで幸せだった推しの恋愛対象がわたしってどういうことですか?~
「結婚?」

わたしが言うとお父さんはわたしの方へ視線を移した。

「つくづくわたしは見る目がないのだな。由莉愛が愛想をつかすのも当たり前だな」

自重するようなフッとした笑いを漏らした。

「結婚ってどう言うことですか?」

「由莉愛と長谷川が結婚してこの研究室を継いでくれることを期待していた。だが、由莉愛が就職したいと言うので、長谷川に託そうと思っていたのだが…それもボツだな」

「佐藤教授…そんな…」

長谷川さんの悲痛な声。

「お前は…好きにしていいと言うつもりだったよ。由莉愛。好きな男がいるんだろう?翔子が言ってた。その男が由莉愛を救ってくれたって」

「お母さんが?」

「ああ。今までろくに父親らしいこともできなくて済まなかった。しかもこんな男と結婚を進めようとしていたんだと思うと我ながら…」

そして壁にかかる時計を見た。
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