エリート商社マンはわたしの王子様~見てるだけで幸せだった推しの恋愛対象がわたしってどういうことですか?~
「お待たせいたしました。こちら置いておきますね」

「うん。あ、えっと」

PCの画面は見たまま、キーボードはカチャカチャ音を立てている。

「コーヒーは気を付けておかわり注ぐようにしますね」

「え?」

王子様が顔をあげた。

「いえ、集中しておられるのかなと思いまして…」

「あ、ああ。うん。よろしく」

たぶん、このまま閉店まで仕事をするつもりなのだろう。
お客様も少ないし、わたしは気を付けて見守るようにしていた。

3回目のコーヒーを注ぐために王子様のところを訪れた時だ。
PC画面にフランス語がびっしり書かれたPDFファイルが表示されている。

王子様は横に置いたスマホで単語を調べながら訳しているらしい。

「あ、それは『夜は助言を運ぶ』ですね。一晩寝たら答えが出る。明日は明日の風が吹くっていうような意味です」

「え?」
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