引きこもり婚始まりました〜Reverse〜
「めぐちゃん、すっっごく綺麗だったわね」
「本当だな。小さい子も来てくれてたけど、憧れの的だったって。めぐちゃん、疲れてるだろうに優しく相手してくれてたから、お姫様だって話題になってたよ」
式が終わって、うちの両親は高揚していたけど。
(女性は複雑だよな)
めぐの家族の邪魔はしたくなくて、春来の登場からずっと彼女を抱いたままだった腕を離した。
できるだけ名残惜しさがでないようにしたつもりだったけど、上手くいかなかったらしい。
少し不安そうにする彼女の髪を崩れないようにそっと撫でて、「行っておいでよ」がどうにか優しく伝わるようにと念じたりして。
元々彼女は一人暮らしも長かったとはいえ、それでもずっと一緒だった時を奪うのだ。
大切に育てて見守ってきた存在が、ただ彼女が許した男だってだけで取り上げられる。
そう思うと申し訳なくて、俺ももっともっとめぐを大切に大切にして、愛してるって伝えて、幸せに幸せにして――そんなことも理解できない脳と、自分勝手な心をした虫やケダモノから女神様を守らなくちゃ。
「めぐちゃんはすごいなぁ。最近、会う人会う人褒められるんだ」
「なんで、あなたが褒められるのよ。すごいのも頑張ってくれてるのも、めぐちゃんでしょ」
お嫁さんに来てもらうというとあまり良くない表現かもしれないけど、女性側の両親の方が大変なのは当たり前で、うちの会話がいい気なものなのも当たってる。
端から見れば、暢気な夫婦の何てない会話だ。
「ごもっとも。でも、事実なんだよ。ご両親にも頭が上がらない。優冬、めぐちゃんのこと大事にするんだぞ。お前にいい顔してても、彼女にはそうじゃない輩もいるかもしれない。気をつけてあげなさい」
「もちろんだよ。守らせてもらってる存在を、自ら傷つけるような真似も絶対にしない。今も、この先も、何度だって誓う」
「そうね。そんなに頑張りすぎなくても、めぐちゃんは勿体ないくらいなんだけど……笑って大丈夫って言えちゃう子だから」
――でも、それだけじゃなかった。
「これが全部初めてになるなんて、烏滸がましいけど……めぐにも、彼女の家族にもそう錯覚できる瞬間を増やしてあげたいんだ」
『めぐ』
『萌』
彼女を指す俺たちの呼び方は、子どもの頃から一貫している。
それなのに、親たちは混ざったり時に変わったりと定まることがなかった。
両親でバラバラなこともしょっちゅうで、誰も特に不思議がることはなかったけれど、それも頷き合えたことだった。
理由が明白、だから、不思議に思うこともない。
答え合わせも要らない。それ以外の理由は、何もないからだ。
「優冬くん」
それが今、二人ぴったり、綺麗に統一されている。