ホテル王の甘く過激なご要望
第1章 キライ

1 物語の始まり

私の名前は琴宮茉莉(ことみやまつり)

愛月県、愛月市(あいづきし)のメインストリート沿いにある巨大高級ホテル"ヘブンリーフェザー"のコンシェルジュをやって4年目だ。

仕事では、顧客からも信頼され順調を極めていたが、彼氏居ない歴は更新真っ只中だ。
婚期も逃した32歳崖っぷちである。
このまま仕事に生きるのも悪くないかも?なーんて、最近では諦め気味だ。

その日、ホテルに着き、更衣室でコンシェルジュの紺色の制服に着替えて、デスク席に座った。

えーと、今日の宿泊客は…?
私は担当であるスイートルームのお客様のチェックイン、アウトのスケジュールを確認していた。

その時、青葉チーフコンシェルジュから呼ばれた。

「琴宮、ちょっと良いか。」

「はい、すぐに行きます。」

私は瞬時に頭の中にスイートルームのお客様の情報を叩き込むと、チーフのデスクの前に向かった。

「琴宮、今日から持ち場を変えようと思う。」

青葉チーフは言った。

「は?
と言われますと?」

私はスイートルームから外されるのだろうか…?
少しの不安が心をよぎった。

「そろそろロイヤルスイートルームを担当してもらおうと思っている。」

青葉チーフは意外な言葉を口にした。

ロイヤルスイートルーム!?
最上階のペントハウス!?
コンシェルジュにとってこれ以上名誉な事は無いわ!

「分かりました!
お任せください!
必ず満足いただけるように努力いたします!」

私は張り切って答えた。

「そうか、それは良かった。
琴宮には3つのロイヤルスイートルームの中のオープンロイヤルスイートルームを担当してもらう。
お客様の情報はこのファイルの中だ。」

青葉チーフは私に一冊のファイルを渡した。

「ありがとうございます!」

私は早速席に戻ってファイルを確認しようとした。
すると…
内線が鳴った。
オープンロイヤルスイートルームと電話の画面に表示されている。

「はい、オープンロイヤルスイートルーム担当コンシェルジュの琴宮でございます。」

「あぁ、ちょっと急いで来てくれない?
1分以内に来て。」

それだけ言うと電話はガチャリと切れた。

い、い、1分以内!?

私はファイルを見る暇も無く、コンシェルジュルームを飛び出さなくてはならなかった。

専用のエレベーターに乗り、オープンロイヤルスイートルームに向かった。
エレベーターの中でファイルを見る事は出来るが、そのまま個人情報の入ったファイルを持ち歩く訳にはいかないだろう。
という判断で私はファイルを置いてきた。

ロイヤルスイートルームに着き、ノックをしたが返事が無い。
仕方ないので、カードキーでオープンロイヤルスイートルームの扉を開け、「失礼致します。」と言い中に入った。
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