ホテル王の甘く過激なご要望

14 突然のご注文

次の日、私は一旦藤井沙織さんの事を置いておいて、相変わらずホテル・ヘブンリーフェザーに居た。

すぐに、仕事用の携帯に電話が鳴った。

画面を見ると、"ド変態天羽"と出ていた。

はいはい、すぐに出ますよ!っと。

「はい、コンシェルジュの琴宮です。」

私は至って平静を装って電話に出た。

『あ、今日さぁ、カラオケしたいんだけど、用意出来るよね?』

「え、用意と申されましても…
カラオケ室は当ホテルにはございませんし、オープンロイヤルスイートルームにもカラオケ機は…」

私は戸惑う。

『俺のポケットマネーから出すから、すぐオープンロイヤルスイートに手配してくれ。』

天羽オーナーは言う。

「か、かしこまりました!」

やっと、コンシェルジュらしい要望が来たので、私は張り切った。
どうしようか…?
多分天羽オーナーの言うカラオケは、業務用カラオケ機の事だ。
普通の家電量販店には売ってないだろう。

カラオケ店に電話してみるか。

私は付近のカラオケ店にかけまくった。

1店舗、中古のカラオケ機を譲ってくれるという店があり、すぐに、軽トラックを手配して運んでもらった。

専用のエレベーターに乗せて、オープンロイヤルスイートに運び、業者に接続してもらう。
ここまでで、100万ほどかかっているが、大丈夫なのか…?

「おっ、早いじゃん。」

「お褒めいただき光栄です。」

私は手を前に合わせて、コンシェルジュらしく言った。

「いくらかかった?」

「110万ですが…」

天羽オーナーは小切手を取り出した。
電子決済では無いのね。

「これで。」

「確かに、お受け取りしました。」

私は記入欄を素早くチェックして、胸ポケットに入れた。

「よし、そうと決まれば、今日はカラオケパーティーだぜ!」

カラオケパーティー?

「では、お友達をお呼びしますか?」

「は?
俺友達なんていないもん。」

うん、やっぱりネ!
その性格じゃネ!

じゃなくて…

「では、お一人でですか…?」

「お前が居るじゃん、琴宮。
優しいコンシェルジュの琴宮は、カラオケパーティーも付き合ってくれるよな?もちろん。」

「は、はぁ…」

「つまみになる物と酒をルームサービスで頼むか。
琴宮お前何が良い?」

そんなこんなで、2人でのカラオケパーティーが始まってしまった。

天羽オーナーははっきり言って歌が下手くそだった。
私もそんなに上手い方では無いのだ。

しかし、思ったよりも楽しかった。

採点でどっちが酷いかを競った。

「俺、52点!」

「あ、負けた、64点です!」

私は用心してカシスオレンジしか飲まなかったが、なんだか酔いが回るのが早い…
しまっ…た…
なにか…もら…れた…?
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