ホテル王の甘く過激なご要望

15 行きましょう!

意識が朦朧とする中、天羽オーナーは案の定私に覆い被さった。

「や、や
やめれくらさい…」

私は呂律も回らなかったが、そう言った。

「やだね。」

紺色の制服のボタンを天羽オーナーはゆっくりと外していく。

「お前が、悪いんだ…
コンシェルジュの癖に…
俺のコンシェルジュの癖に…」

やはり、天羽オーナーは幼少期のコンシェルジュからの仕打ちで傷ついている…!

そう思ったが、私の紺色のベストは脱がされてしまった。
白のブラウスだけになる。

「ひゃめてくらさい…」

天羽オーナーは私の胸を感触を確かめるように触り、妖艶に舌なめずりする。

私は…

「ふじいしゃおりさん!」

あの名前を言った。

ピタリと天羽オーナーの手が止まった。

「今…なん…て…」

「おーなー、ふじいしゃんの…ところに…いっしょにひきましょお…」

朦朧とする意識の中でそう言った。

「あやまって…くだひゃい…って…
むかしゅのこと…」

私は必死に言った。
これしか、天羽オーナーを救う手は無い。

「萎えた…
俺は寝室で寝る…」

そう言って、天羽オーナーは寝室に入って行った。

私はそこで意識を手放した。

♦︎

翌朝、私は床で眠っていたらしい。

背中がバキバキで痛い。

天羽オーナーは…?

「天羽オーナー?」

私は寝室を覗く。

「この、おせっかい女!」

クッションが飛んできた。

「天羽オーナー、藤井沙織(ふじいさおり)さんの住所を調べました。
旦那さんに先立たれ、今は1人静かに暮らしているようです。
行きましょう!
一緒に!

怖いのは分かります!
でも、ここを乗り越えなきゃ…」

私は言う。

「うるせーんだよ!
お前に何が分かる!?」

天羽オーナーは怒鳴る。

「分かりません!
でも、私にだって辛い事はありました!
でも、この仕事がそれを癒してくれたんです!

だから、天羽オーナーにも乗り越えて欲しいんです!」

「お前は…
本当に…
アホだ…な…

俺は、昨日、お前を襲おうとしたんだぜ…?」

天羽オーナーはクッションに顔を埋めてそう言った。

「でも、襲いませんでした。
私は天羽オーナーを信じています。」

私は真っ直ぐに天羽オーナーの方を見てそう言った。

「琴宮…
お前が俺のコンシェルジュだったら、良かったのに…な…」

「行きましょう…!」

天羽オーナーは静かに立ち上がった。

「場所は?」

「少し遠いです。
島月県の島月市(しまづきし)ですから、えーと、お車の手配を…」

「あぁ、頼んだ…」

私はリムジンを手配した。

後部座席に天羽オーナーと私が乗り込んだ。

天羽オーナーは車の中でずっと黙っていたが、その手は震えていた。

私は…
彼の手にそっと手を置いた…
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