【完結】ホテル王の甘く過激なご要望
18 緊急事態
映画の途中で、武人の携帯が鳴った。
私たちはプロのコンシェルジュである。
お客様のどんなご要望にもお応えする為、時には休みの日にもホテルに呼び出される事もあるのだ。
武人は映画ホールから出て電話に出たのだと思う。
私も彼の後を追った。
武人は電話を切り、深いため息を吐いていた。
「どうしたの?
武人。」
私は尋ねる。
「ドイツ人のお客様がスイートルームに急に来られたらしい。
通訳が居ないから戻ってきてくれってさ。
山野じゃ、ドイツ語が堪能とは言えないからな。」
武人は言う。
そう、コンシェルジュの中でドイツ語に精通しているのは、武人だけだった。
山野の付け焼き刃のドイツ語では細かな意思疎通は無理だろう。
「私も行くわ。」
「え、いや、いいよ。
せっかくだから、映画見てこいよ。」
武人は言うが、私だけ映画館でのんびりする事は性格上出来ない。
「私も英語なら話せるし、何か手伝えるかもしれないわ。」
私は言った。
そして、2人で映画を途中で抜け、ホテル・ヘブンリーフェザーに戻った。
スイートルームに向かうと、ドイツ人の男性のお客様はかなりイライラしているようだった。
武人が流暢なドイツ語で話しかけると、やっと少し安堵した表情を見せた。
「青葉チーフ、琴宮。
こちらのお客様の奥様が今日の夜やって来られるそうなんです。
そこで…
結婚記念日を祝って、氷のケーキを作って、テーブルに飾りたいそうなんです。
時間になったら、中のティファニーのネックレスが溶けて見えるようにして欲しいというご要望です。
可能でしょうか?」
武人はドイツ語の会話内容を簡略に言う。
「どうだ?琴宮。」
青葉チーフは私に話を振る。
「恐らく、氷のケーキはレストランのシェフに頼めばなんとか…
氷を固める時間と彫刻する時間が必要ですけど、武人、奥様は何時頃に来られるの?」
「20時頃にこのホテルに到着予定らしい。」
武人が言う。
「大丈夫か、琴宮?」
今は13時45分。
ギリギリ間に合うだろう。
「間に合わせます!
武人ネックレスをお預かりして!
今から氷の中に仕込まなくては…!」
私は来栖や山野にスイートルームの空調の温度の設定を操作するように指示した。
小さな氷で実験するようにも伝えた。
そして、レストランへ走った。
「無理だよ。
そんな大きな氷は用意できない。
簡単な彫刻なら可能だが。」
「そんな…!」
私はすぐに付近のレストランに電話をかけたが、巨大な氷は作れないという返事だった。
どうしよう…!?
製氷店は隣の県だ、行って帰って、とても間に合わない!
それにネックレスも入れないといけないし…!
そう思って焦っていたその時、仕事用の携帯が鳴った。
天羽オーナーからだった。
私たちはプロのコンシェルジュである。
お客様のどんなご要望にもお応えする為、時には休みの日にもホテルに呼び出される事もあるのだ。
武人は映画ホールから出て電話に出たのだと思う。
私も彼の後を追った。
武人は電話を切り、深いため息を吐いていた。
「どうしたの?
武人。」
私は尋ねる。
「ドイツ人のお客様がスイートルームに急に来られたらしい。
通訳が居ないから戻ってきてくれってさ。
山野じゃ、ドイツ語が堪能とは言えないからな。」
武人は言う。
そう、コンシェルジュの中でドイツ語に精通しているのは、武人だけだった。
山野の付け焼き刃のドイツ語では細かな意思疎通は無理だろう。
「私も行くわ。」
「え、いや、いいよ。
せっかくだから、映画見てこいよ。」
武人は言うが、私だけ映画館でのんびりする事は性格上出来ない。
「私も英語なら話せるし、何か手伝えるかもしれないわ。」
私は言った。
そして、2人で映画を途中で抜け、ホテル・ヘブンリーフェザーに戻った。
スイートルームに向かうと、ドイツ人の男性のお客様はかなりイライラしているようだった。
武人が流暢なドイツ語で話しかけると、やっと少し安堵した表情を見せた。
「青葉チーフ、琴宮。
こちらのお客様の奥様が今日の夜やって来られるそうなんです。
そこで…
結婚記念日を祝って、氷のケーキを作って、テーブルに飾りたいそうなんです。
時間になったら、中のティファニーのネックレスが溶けて見えるようにして欲しいというご要望です。
可能でしょうか?」
武人はドイツ語の会話内容を簡略に言う。
「どうだ?琴宮。」
青葉チーフは私に話を振る。
「恐らく、氷のケーキはレストランのシェフに頼めばなんとか…
氷を固める時間と彫刻する時間が必要ですけど、武人、奥様は何時頃に来られるの?」
「20時頃にこのホテルに到着予定らしい。」
武人が言う。
「大丈夫か、琴宮?」
今は13時45分。
ギリギリ間に合うだろう。
「間に合わせます!
武人ネックレスをお預かりして!
今から氷の中に仕込まなくては…!」
私は来栖や山野にスイートルームの空調の温度の設定を操作するように指示した。
小さな氷で実験するようにも伝えた。
そして、レストランへ走った。
「無理だよ。
そんな大きな氷は用意できない。
簡単な彫刻なら可能だが。」
「そんな…!」
私はすぐに付近のレストランに電話をかけたが、巨大な氷は作れないという返事だった。
どうしよう…!?
製氷店は隣の県だ、行って帰って、とても間に合わない!
それにネックレスも入れないといけないし…!
そう思って焦っていたその時、仕事用の携帯が鳴った。
天羽オーナーからだった。