【完結】ホテル王の甘く過激なご要望
第3章 ショウブ

33 天羽と久遠

ホテルに夜の20時頃に戻ると、エントランスに武人が立っていた。

「?
武人、どうしたの?
誰か大事なお客様のお迎え?」

私は武人に駆け寄り尋ねる。

「違うよ…
天羽オーナーに話があるんだ。
琴宮も居てくれ。」

「?
え、えぇ…」

私は不思議そうに武人の顔を見た後に、天羽オーナーがこちらにやって来るのを振り返った。

「なんだ、コンシェルジュ?
お前は呼んでないぞ。
俺の担当は琴宮だからな。」

「天羽オーナー、いや、天羽。」

武人は言う。

「ちょっ、流石に呼び捨ては…」

私は武人にそう言うが…

「何だ、久遠?」

天羽オーナーも苗字で呼んだ。

「アンタと勝負がしたい。
琴宮をかけて。」

武人は真剣な面持ちでそう言った。

「ふぅん?」

にやりと笑って、好戦敵な瞳で武人を見る天羽オーナー。

「俺が勝ったら、琴宮はオープンロイヤルスイートルームの担当から外し、2度と琴宮に近づかないでくれ。」

武人。

「俺が勝ったら?」

天羽オーナーが言う。

「俺はもう琴宮には近づかない…」

武人は静かに、しかし、はっきりとそう言った。

「なるほど…
お互い目障りなハエって訳か…」

天羽オーナーが言う。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください…!
2人とも何を真剣に…!?
馬鹿げてるわ、そんな勝負…!」

私は2人を止めようとする。

「琴宮、これは真剣勝負なんだ。」

「そこだけ同意する。
お前は黙って見てろ。」

「そんなっ!?
なに2人で睨み合って…
馬鹿馬鹿しいわっ!」

私は言うが、2人は一歩も引く気配がない。

「勝負の内容は?」

天羽オーナーが尋ねる。

「アンタもホテル王なら、接客の知識はかなりあるはずだ。

お客様のご要望にどちらがより応えられるか。
これから来るだろうスイートルーム以上の3人のお客様のご要望に、より的確に応えた方が勝ちだ。
2つ取った時点で、ソイツの勝ち。
1対1なら、3人目まで続行する。」

武人は説明する。

「なるほど…
俺を舐めてるようだが、接客にかけても徹底的に学んでるんだぜ?これでもな。」

天羽オーナーが言う。

「そんなに自信があるなら、勝負しろよ。」

「良いだろう…」

「とりあえず、今日はもうスイートルーム以上のお客様は来ない。
勝負は明日からだ。」

武人がそれだけ言い、去って行った。

「天羽オーナー!
やめてください!
こんな勝負…
何も生まれないわ!」

「これは男と男の真剣勝負だ…
それに、売られた喧嘩は買う主義でね。」

「な、なにカッコつけて…」

武人はコンシェルジュとして超一流だ。
天羽オーナーが勝てるだろうか…?
いや、厳しいだろう…

そう思うと、なぜか、胸が苦しくなった。
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