【完結】ホテル王の甘く過激なご要望

37 アメリカの大富豪

「なるほど…」

天羽オーナーは深く納得したようだ。

「最後に…
コンシェルジュには、ここまでのサービスをすれば良い、というはっきりとした決まりはありません。
久遠コンシェルジュは取引先の相手の連絡先を調べるだけでなく、先に連絡し、お詫びを伝えています。
これは、後でメモを失くしたお客様と連絡を取る時の事を考えての久遠コンシェルジュ流のサービス精神です。
そして、このマインドが非常に大切なのです。
お客様の為にできる事は何でもする、という。

たとえ、礼儀や語学に優れていなくても、このマインドの高いコンシェルジュはお客様に好かれるものです。

私から今言えるのは以上ですが…

どうですか?
天羽オーナー?
これでも、コンシェルジュの分際で、とおっしゃいますか?

プロのコンシェルジュは仕事に全てをかけています。
天羽オーナーもホテル王ならば、今の私の言葉から何かを感じ取ってくださるはずです。」

私は言った。
とりあえず、私が今言える全てを込めて…

「琴宮、お前の言いたい事はよく分かった。
確かに俺はコンシェルジュじゃないし、少しコンシェルジュというものを(あなど)っていたのかもしれない…

次の勝負は、勝つ。
勝ってみせる。」

天羽オーナーは言った。

「はい、期待しております。
では、おやすみなさい。」

と言った時、天羽オーナーはソファに沈んで眠り始めていた。

ふふふ。

私はそっとオープンロイヤルスイートルームの出口の扉を閉め、退出した。

♦︎

次のご要望があったのは、15時頃の事である。

アメリカからのお客様からだった。

お客様はモダンロイヤルスイートルームに泊まってらっしゃったアメリカのカジノ経営の大富豪である。

『お客様、コンシェルジュの琴宮、天羽、久遠でございます。
私たちがお客様のご要望にお応え致します。
どうなさいましたか?』

私は英語でそう言った。

『この腕時計を明日の16時のフライトまでに100個用意して欲しいのだが…』

お客様の手元を拝見すると、オメガの腕時計が握られていました。

お客様はこのオメガの腕時計を大変気に入り、カジノの従業員の人数分揃えられないか?とのご要望でした。

『かしこまりました、お客様。
私たちが全力でご要望を叶えさせていただきます。』

こうして、接客対決第2回戦が口火を切ったのだった。

武人と天羽オーナーはそのご要望を聞き、腕時計の品名と型番をさっと確認すると、モダンロイヤルスイートルームから出て行った。

オメガの腕時計100個…
何かを大量に揃えて欲しいというご要望は珍しくは無いが、オメガの腕時計となると…

さぁ、勝負はどうなるのか!?
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