【完結】ホテル王の甘く過激なご要望

40 最終戦の結果

そして、次の日、最後となるご要望が、お客様からあった。

そのお客様は北海道からお越しになったスイートルームの初老の男性方で、奥様の誕生日の為にあるお店を探しているとの事だった。

私、天羽オーナー、武人がスイートルームに向かい、詳しいお話を聞いた。

そのご老人はこう言った。

「何かの雑誌に掲載されていたお店でねぇ…
行ってみたら、とても雰囲気も良くて、料理も美味しかったと、妻が喜んでいてねぇ…
だけど、どの雑誌に載っていたかも、お店の場所も、名前も、なぁんにも覚えて無いんですよ。
年は取りたくないものですねぇ…」

「かしこまりました。
お客様、ご安心ください。
我々が必ずそのお店を見つけ出します。」

そして、第3回戦、つまり最終戦が始まったのだった。

まずは、天羽オーナーも武人もお爺さんと話したい事がある、という事で、1時間ずつ時間を取ってもらうことにした。

♦︎

side天羽萬里

爺さんに話を聞いたものの、本当に彼は店の名前も外観も場所も、もちろん、電話番号も何もかも覚えて居なかった。

これはダメだ…
と、諦めかけた時…

爺さんは、一枚の写真を取り出して言った。

「これはレストランの窓から外を撮った物なんですけどね。
やっぱりダメでしょうねぇ…
こんな物じゃ…」

そう言ったその写真には、確かに特徴的な物は写っていなかった。

だが、愛月タワーが背景に入っていたのだ。

コレは…イケる!

なんとか、方角と照らし合わせて、この店があった場所を割り出せる…!

そして、最後の戦いが始まったのだった。

♦︎

翌日。

天羽オーナーと武人は揃ってお爺さんの部屋を訪れた。

2人は口を揃えて、店名を言った。

「「"ブルーローズ愛月"ですね?」」

どうやら、2人とも目的の店名を割り出したようである。

「そうそう!
そう言う名前じゃったよ!
いやぁ、助かりました。」

お爺さんは言う。

「お客様、レストランまでのお車をご用意しておりますので、エントランスへ奥様とどうぞ。」

天羽オーナーが一礼して言う。

「レストランのシェフに頼んで、以前の料理を再現してもらっています。
お楽しみください。」

武人が一礼をして言う。

「ありがとう…!
本当にありがとう…!」

お爺さんは少し涙ぐみそう言って2人のコンシェルジュと握手した。

こうして、最終戦は引き分けに終わったのだった。

つまり、トータルして"引き分け"ってこと?

私はなんだか腰が抜ける思いだった。

「ふん、中々やるじゃないか。」

武人。

「こっちのセリフだ。」

天羽オーナー。

こうして、勝負の行方は棚上げとなったようだ。
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