【完結】ホテル王の甘く過激なご要望

44 モテ男の…

side天羽萬里

俺はその日、モテ男のデートテクニック!を熟読していた。
Wiiもダメ、温泉もダメ、DVDもダメ、何か…なにか載ってないのか、えーいくそ!

その時、あるページで手を止めた。

何々?
モテ男のドライブデートテクニック!?

モテ男のドライブデートテクニックで、彼女のハートを鷲掴みしてしまおう!

1、助手席に手を回して車をバックで彼女を胸キュン!

2、片手ハンドルでカッコよく!

3、道に詳しさをアピールして、知的な魅力!

4、ドライブ音楽セレクトが洋楽!

5、信号待ちのキスで翻弄!

なるほど、なるほど!

これだ!!!

俺はすぐに車を用意させた。
もちろん、赤のフェラーリだ。
オートマなのも確認済みだ。

そして、琴宮をエントランスに呼び出した。
琴宮は制服のままやってきた。
まぁ、制服でもいいか…

重要なのは俺の運転技術である。
琴宮をアッ!と言わせてやる!

「あぁ!」

「なんだよ、もう俺の運転にシビれたのか?」

「前の車にぶつかるぅぅぅぅうう!!!」

琴宮は悲鳴を上げる。

おかしいな、確かにアッ!と言ったが、何か違う気がする…
俺はブレーキをかける。

「ぎゃっ!」

次はぎゃっ!か。
悪く無いぞ、きっと。

「急ブレーキかけないで下さいよ!(怒
あぁ、ほら、後ろがつかえてますから、進んで!」

「お前、止まれとか進めとかうるさいな!
どっちかしかできんだろ!」

俺も久しぶりの運転で要領がよく掴めない。

「進んでください!
ゆ、ゆ、ゆっくり!」

「わ、わ、分かった!
進むんだな!?」

俺は急発進する。

車のオーディオから洋楽が流れている。
曲はマイケルジャクソンのスリラー!
まさしく今の運転の状況だ!

「ぎゃあ!
車線超えてますよ!!!」

「うるさいなっ!
お前はぎゃあ!とか、あぁ!しか言えないのか!」

俺たちはそんな感じで悲鳴を上げながら、何とかコンビニの駐車場に着いた。

ん?
バックで助手席に手を回すんだったっけ?

そう思った時、琴宮が車から降りた。

「ちょっと変わってください!
私が運転します!」

「な、な、何でだよ!」

モテ男のドライブテクニックができねーじゃんか!

「天羽オーナーの運転は恐怖です!
私がやります!

いいから、さっさと退く!!!」

琴宮は怒っている。

「わ、分かったよ…!」

俺は一つもモテ男のドライブデートテクニックを実践できなかった。
自分が情け無かった…

そして、琴宮は軽快に車を走らせ始めた。

「たまには、ドライブも良いですね。」

「そうか…?」

「なに、しょげているんですか?」
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