【完結】ホテル王の甘く過激なご要望

46 わがまま王子の

その日、またわがまま王子から電話がかかってきた。

今度は一体何だろうか?
あの"モテ男のデートテクニック!"は少しおかしいのでは無いだろうか?

今度行ったら、借りると言って取り上げてみようか…?

そんな事を考えながら、専用のエレベーターに乗り、オープンロイヤルスイートに向かった。

「おぉ、琴宮か!」

私が失礼します、と中に入ると、天羽オーナーが声をかけてきた。
私しか居ないだろうに、そんなに大きな声で、"おぉ、琴宮か!"と言われても…

私が何と答えようか、迷っていると…

天羽オーナーは続けて言った。

「ど、ど、どうだ?
最近の調子は?」

「はぁ…
特にこれといった事は無いですが…」

私は正直に答えた。

「そ、そうか、ストレスが溜まっているのか。」

は?
いや、特にこれといった事は無い、と答えたはず…

怪しい…!
また、モテ男のデートテクニック!を読んでいるのでは無いだろうか!?

「天羽オーナー、私は元気です。」

「じゃ、じゃあ、ストレス発散をしないといけないな!!!」

「いえ、だから…」

「実は、この間の会議でな、おせっかいな取引先がボクシングのチケットを2枚くれたんだ。」

どんどん、話が進行していく。
まるで、乙女ゲームのようだ。

しかも、ボクシング?
なぜ、そのチョイスになるのだろうか???

「天羽オーナー、私は元気ですし、ボクシングは苦手です!」

私は声を張り上げて言った。

「ぷっ、何だ、お前…!
ボクシングが苦手なのか!

分かって無いな。
男の熱い闘いを!

俺が教えてやるから、来い!」

結局命令口調だ。
これでは、この間のドライブの告白は何だったんだろう?となる。

「かしこまりました。
お車をご用意致します。

私は着替えて参りますので…」

私が諦めて言うと…

「何言ってる、琴宮。
場所はすぐ近くだから、今日は電車で行くんだぞ。
まぁ、そう言うことで、お前は早く着替えてこい。」

天羽オーナーは言う。

電車っ!?
この御坊ちゃまと、電車に乗るのか!?

不安しかない…

が、仕方ないので、シャツとジーンズに着替えた。
ボクシングならば、そんなに洒落た格好よりも動きやすい方が良いだろう。

そう思ったからだ。

そして、私はホテルのエントランスに向かい、天羽オーナーと駅まで歩いた。

「て、て、天気が良いな!」

「うーん、そうですか?
雨雲がありますよ?」

一体どういう視力をしているのか?
このどんよりとした曇り空を天気が良いと天羽オーナーは言った。

あ、モテ男のデートテクニック!没収するの忘れてた!

だが、そんなこんなで駅に着いた。
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