【完結】ホテル王の甘く過激なご要望

49 夏風邪

かろうじて意識のある天羽オーナーを病院に連れて行くと、早速点滴するという事になった。

「夏風邪ですね。」

お医者様は言った。

「そうなんですね。」

私は診察室に呼ばれて天羽オーナーの代わりに聞いていた。

「点滴で熱は下がるでしょうから、後は処方された薬を飲ませて安静にしていて下さい。
なに、2、3日もあれば治るでしょう。」

お医者様は言った。

「ありがとうございます。
お世話になりました、先生。」

そして、またタクシーで天羽オーナーをホテルに連れ帰った。

今度はオープンロイヤルスイートルームまでなんとか自分で行けるらしい。
点滴が効いたのだろう。

「琴宮…
俺は…
死ぬのか…?」

「あなたみたいなわがまま王子がそう簡単にくたばりませんよ!
馬鹿な事言ってないで、さっさとベッドに行く!!!」

私は呆れ果ててそう言った。

その日、私は徹夜で天羽オーナーの看病をすることになったが、天羽オーナーは次の日になっても熱があった。

薬…
効いてないのかしら…?

私が不審に思い、天羽オーナーの寝室に入ると、ゴミ箱に薬が飲まずに捨ててあった。

「天羽オーナー!
これ、一体どう言う事ですか!?」

「う…る…さい…
俺は…
大丈夫…だ…」

「大丈夫じゃ無いから、そんな風にダウンしてるんでしょーが!!!
ちゃんと薬飲まないと!!!」

私はゴミ箱から薬を取り出し、天羽オーナーに突きつける。

「いや…だ…
粉…薬…だぞ…
俺は…錠剤…じゃ…なきゃ…
飲めない…」

ぜいぜいと言いながらいう天羽オーナー。

「な、何を子供みたいな事言ってるんですか!?」

私はまたもや呆れ果てる。

「口…うつし…
口移しなら…飲む…」

「はぁ!?
く、く、口移し…!?
そ、そんなの出来る訳…!」

「じゃ…
この…まま…
死ぬ…」

天羽オーナーは本当に飲まない気だ。

「天羽オーナーっ!
飲んでください!」

「嫌だ…!!!」

ここまで来ると、まるで駄々っ子だ。

私は天羽オーナーの鼻を摘んで口を開け、粉薬をぶち込んだ。
そして、水を口に含み、口移しで流し込む。

「琴宮…
もっと…
水…」

天羽オーナーはねだるように私の口から水を得ようと貪った。

「ん…
ちょ、もう、無いから!」

「琴宮…
もっと…
キス…」

天羽オーナーのおねだりに負けて、キスを続けてしまう自分を…
恨んだ…

そして、天羽オーナーはキスしながら眠ってしまった。
なんて、失礼な奴なんだ!

そう思いながらも、その寝顔を見て、ホッとした。

こうして、天羽オーナーの熱も下がり、いつものわがまま王子に戻ったとさ。
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