ホテル王の甘く過激なご要望

5 ご要望の女性を

「うん、まぁね…」

同期である武人(たけと)の前ではついタメ口で話してしまう。

「あのオーナー女癖悪いって評判だぜ?
大丈夫か?
まぁ、コンシェルジュに手は出さないかもしれないけど。
毎晩女取っ替え引っ替えってウワサ。」

案の定の噂なので、特に驚きもしないが。
しかし、それならそれで、風俗嬢でも呼んで性欲処理すれば良いのでは?と思った。
そして、その時、私は閃いた。

「ありがと、武人!
今度なんか奢るわ!」

「はぁ?」

武人の不思議そうな声を後ろに、私は制服を正してオープンロイヤルスイートに向かった。

ノックすると、中からまたしても返事は無かった。
私はカードキーを差し込む。

天羽オーナーはバルコニーのプールで、プールフロートに乗って優雅に浮かんでいた。
さっきも見たから分かるが、均整の取れた美しい肉体に、長い手足、指先まで綺麗だった。

しかし、その美しさに見惚れる訳にはいかない。
それでは、さっきの二の舞だ。

「天羽オーナー。」

「あぁ、琴宮(ことみや)か。
電話しても出ないから逃げたかと思ったよ。」

えぇ、逃げ出したかったですけどね!

「天羽オーナー、よろしければ夜のお相手も手配する事もできますが?
どのような容姿が良いとかおっしゃっていただければ、ご要望の女性を…」

「おいおいおい、ちょっと待てよ。
俺が女に飢えてるってのか?」

天羽オーナーは薄茶色のサングラスを外して険しい視線を私に向けた。

「………違うのですか?」

「あのなぁ…
悪いけど、俺は女には困ってないんだよ。
アンタに用意してもらうほど、落ちぶれてもない。

ところで、もうプールから上がるから、バスタオル取ってきてくれないか?」

天羽オーナーは言って、平泳ぎしてプールサイドに上がった。

私はバスルームの洗面室からバスタオルを取り、天羽オーナーに持って行った。

「拭いてよ。」

「は?」

「タオルで拭けって言ってるの。」

天羽(あもう)オーナーが言う。

「ですから!
お客様の身体に触れることは出来ないと…!」

やっぱりケダモノだわっ!

「ふぅん、琴宮さ、俺の事平手打ちしたよね?
言っちゃおうかなー?
チーフコンシェルジュに。」

「ふ、ふ、拭けば良いんでしょ!」

バスタオルを彼の胸元に当てた。
瞬間、赤くなるのを止められなかった。
割れた腹筋も、背筋もバスタオルで拭いていく。

「下もだ。」

「え…?
いや、それは…!」

「平手打ち」

私はバスタオルを足元に当てた。

その時、天羽オーナーは私のその手を股間に押し付けた。(水着の上からだが)

「き、き、キャァァァァァァァァ!!!」

私はバスタオルを投げ捨てて、オープンロイヤルスイートからダッシュして逃げた。

後ろから、天羽オーナーの笑い声が聞こえた気がした。
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