ホテル王の甘く過激なご要望

6 理性崩壊

私はその日具合が悪いと言い、来栖を後任に指名して、早退きさせてもらった。

来栖(くるす)ならば、顔だって可愛いし、イケメン天羽オーナーに何されても良い!って感じだったから、ピッタリだろう。
そうよ、あの子がロイヤルスイートの担当になれば良いんだわ。

私は…

お客様から、「ありがとう。」「助かったわ。」「素敵なサプライズだったよ。」と言われる事が誇りだった。
なのに、天羽オーナーはその誇りを汚した。

悔しかった…
あんな男に…

私の視界は滲みっぱなしだった。

スーパーで、一人鍋の材料を買い、ビールと酎ハイを何本かカゴに入れた。
こういう嫌な日は飲んで忘れるに限るのだ。

一人暮らしのマンションに帰ると、お風呂に入り、部屋着に着替えて、ささっと調理して1人鍋を作った。
オヤジ臭いとなんと言われようと、これが私の至福の時間だ。

ビールを開けた時、プライベート用の携帯のLINEが鳴った。
ん?
誰だろ?

見ると、それは武人だった。
武人(たけと)には、プライベート用のLINEだけは教えていた。
仕事用の携帯は電源を切っている。

でも、今は神聖な一人鍋の儀式中だ。

ごめん、武人…!
と思いながら、後で返信する事にした。

と思っていたら、そのままソファで眠ってしまった。

あぁ…
極楽だ…わ…

♦︎

そして、翌朝、携帯のアラームが段々と大きくなっていく。

「えぇ!
もう朝なの!?」

私はシャワーを浴びて、髪を乾かし、いつもの黒のワイシャツとグレーのスカートを履いて、化粧して、マンションを飛び出した。

あのケダモノと戦って勝つのだ!
一夜明け、それが私の目標になっていた。

コンシェルジュのプロとして、戦ってみせる!

もう逃げないわ!
(多分…)

更衣室で紺色の制服に着替えて、キッと、鏡の中の自分を睨んだ。

大丈夫。
私なら大丈夫よ。

そして、コンシェルジュルームに行くと…

「おぉ、琴宮体調は大丈夫か?」

青葉チーフが言った。

「えぇ、ご迷惑とご心配をおかけしました。
今日からまた、職務に邁進いたします。」

と言うと、青葉チーフは満足気に「そうか、そうか。」と言って去って行った。

「センパァイ!
聞いてくださいよー!」

来栖が私のデスクの前にやって来た。

やはり、来栖もセクハラされたか!?

「どうしたの?」

私は冷静に尋ねる。

「天羽オーナー、超クールですよねぇ!
握手してくださいって言ったらぁ、コンシェルジュとしてどうなのか?って言われてぇ!
お堅すぎません!?」

「へ、へー…(O_O)」

私の理性は崩壊しようとしていた。

なんで私にだけド変態なのよっっっ!?
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