ホテル王の甘く過激なご要望

9 飲み会

市内某所の居酒屋にて。

その日、私は後輩の来栖由奈(くるすゆな)山野彰(やまのあきら)、同期の久遠武人(くおんたけと)と私、の4人で飲みに行っていた。

4人共が明日は遅出で、それならば飲もう、と言う事になったのである。
ホテル・ヘブンリーフェザーには、青葉チーフを入れて9人のコンシェルジュが居る。

ロイヤルスイート担当が3人、スイートルーム担当が3人、残り3人は特に担当を持たず広くホテル内のお客様の困り事に対処している。

「はぁ〜、やってらんね〜っすよ〜。」

山野がビールのジョッキをテーブルに軽く叩きつけながら言った。

「どうした?山野?」

武人が尋ねた。

「いやぁ〜、今日同じ客に5回もタバコ買って来いってパシられて…
コンシェルジュはパシリじゃねぇっつぅの!」

山野が言う。

なぁんだ、そんな事か。
それが、天羽オーナーの命令であれば、私は10回でも20回でも喜んでタバコを買いに行くだろう。

「生2つ追加!」

私が店員に言うと、来栖が尋ねた。

「センパァイ、珍しいですねぇ?
飲み会は仕事の一環だから、飲まない主義じゃ無かったですぅ?」

飲まなきゃやってらんないわよ!
心の中の声。

「うん、今日は飲みたい気分なのよ。
グダグダ言わないで、おつまみ何か注文してよ。
仕事でこき使われてるんだから、飲み会では働かないわよ!」

私もビールジョッキを軽くテーブルに叩きつける。

来栖と武人は、私と山野の飲みっぷりに顔を見合わせている。

「ロイヤルスイート上手く行ってないのか…?」

武人が聞きにくそうに聞いた。

「べ、べ、別にぃ?
ただ…」

「ただ?」

「ちょっとね。
扱いにくい客なのよ。」

私は武人に言う。
セクハラなんて、この場では言いたくなかった。

「そっか。」

武人。

「飲みましょう、せんぱい!」

山野が届いたビールを差し出す。

「おぅ、飲むわよ!」

出来上がりかけてる2人は派手に乾杯してビールを飲んだ。

それからの意識は無い。

♦︎

目が覚めると、ベッドの上に居た。
だけど、ワイシャツとスカートは履いたままで…

「やだ、皺になっちゃう…」

それに、ベッドはいつもの匂いと違う。
このミント系の匂い、知っている…

「起きたか?」

部屋の明かりが付き、ジャージ姿の武人が水を持って来た。

「な、な、なんで!?」

「お前ね、タクシーに乗せて住所聞いたら、お星様の上とか、木の上とか、訳わかんねー事ばっかり言うから、俺ん家に連れてきたんだよ。
男運悪かったら、襲われてるぞ。」

武人はペットボトルを差し出して言った。

「ごめん、武人…」

「今日はもう遅いから。
明日の朝一で送ってやるから。」

武人は優しい。

「ありがとう…」
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