花と共に、あなたの隣で。
1.桜舞う青空
正門から校舎に続く道の両側に桜の木。風に乗って舞い散る桜は、一体何を想って空を舞う。私も桜の花びらみたいに美しく散れるかな、なんて物思いにふけながら校舎に向かう。
昇降口にはクラス分けの表が張り出されていた。私の名前は……1年A組の欄にある。今日から私は、高校生だ。
同じ中学校、スポーツクラブなど、何らかの顔見知り同士が固まっている初めましての教室。しかし私はそんな光景に目もくれず、自分の席に座り本を開く。騒がしい教室でも、本さえ開けば私の心はもう本の中。本さえあれば私はどこでだって生活していける。
一般的に『真面目』だと言われる部類の見た目をした私。それもあって、私に敢えて話し掛けてくる人もいない。というか、それが良いのだ。
高校入学時の抱負。私は、友達を作らない。友達を作っても、悲しくなるだけなんだから。そんなもの、最初から作らないに限る。
そんな強い意志を持って私は今日、ここの門をくぐったのだ。
意外と1人の生活は楽しかった。何の気兼ねも無く過ごす毎日。誰も私に関心を持たないし。それが凄く居心地良かった……。あの人物に出会うまでは。