花と共に、あなたの隣で。
16.記憶に残る桜の花
1年生最終日。
佐藤先生から貰った色紙を信じて、私は久しぶりに重い足取りで教室に向かった。
結局色紙を貰ってから今日まで、学校には一切近寄りもしなかった。何だかんだ理由を付けて距離を置いた、面倒臭がり屋な私。
一方、佐藤先生は体調に波があり、休みや早退を繰り返していたらしい。そして早退した日は必ず、わかば園まで来てくれていた。
「っあ、森野!!」
教室に入って第一声、私の名を呼ぶ戸野くんの叫び声が飛んできた。その声に釣られてクラスメイト全員がこちらを向く。そして「森野さん、やっと来た……」などと、みんなが嬉しそうに声を上げたのだ。
「森野、みんな待ってたんだよ」
「みんなが?」
「そう。みんな、君を待っていた」
自分の席に向かい鞄を置くと、ゾロゾロとクラスメイトたちが集まって来た。初めての状況に戸惑いながらも対応していると、その様子を戸野くんが嬉しそうに眺めていた。
意外にも私なんかと話したい人が居たらしい。私にいじめをしていた集団は近寄って来なかったけれど、遠くから静かに様子を眺めていた。
クラスメイトに囲まれながら修了式に参加し、その後のホームルームが終わってからも囲まれ続けた。
戸野くんから私の病気のことを聞いたってだけで、ここまで変わることもあるかと疑問に思っていた。しかし、その疑問は直ぐに払拭される。どうやら1年間、私がクラスメイトと一切関わって来なかったことが原因らしい。関わらないからこそレア感が増す。つまり関わらないからこそ、1年A組の中でレアキャラになっていた……らしい。
そして、プラスして同情。こちらはあまり良いものではないが、誰しも『病気』『余命』と聞けば、『可哀想』という思いが発動するものだ。それが原動力となり話してくれた人もいるみたい。