早河シリーズ序章【白昼夢】
第五章 夢と現実の狭間
 そして王子様とお姫様は幸せに暮らしました。おしまい。

 子供の頃に読んだおとぎ話のラストシーンを子どもの私は何の疑いもなく信じていた。
王子様とお姫様は結ばれてハッピーエンドで終わる。その結末に私は手を叩いて喜んでいた。
でも現実はおとぎ話みたいなハッピーエンドにはならないね。

夢なら覚めて
こんな悲しい結末は嫌だよ
ねぇこれは夢なの? 現実なの?

 ……またこの夢だ
これはいつの光景だろう?

春……桜のはなびら……街がピンク色に染まって…
お父さんとお母さんがいて……
おじさんが笑っていた

おじさんは私に優しく微笑んでくれた
だけどおじさんは哀しい瞳をしていて
哀しい瞳をして優しく笑っていた
そう、彼のように

二度目だったんだ
哀しい瞳をして優しく笑う人に出逢ったのは……

 ピンク色の夢の後はまたモノクロの夢に切り替わる。最近はいつもそう。
モノクロの夢の中で丸い月だけが不自然に黄色い。

 目覚めた時にはいつも目に涙が溜まっていた。息をするのも苦しかった。
なぜ泣いていたのか、もう起きた時には忘れてる。

唯一覚えていたのは夢の香りだけ。

甘くて優しくて温かくて切ない
目覚めた時に残っていたものは彼の残り香だけだった……

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