早河シリーズ序章【白昼夢】
大学生と接する機会のない美月にとって見聞きする何もかもが高校生とは違う大人の世界。
時間にして十分弱の出来事だったのが信じられないくらいに、目まぐるしく、あっという間に過ぎていき、隼人が残した煙草の香りだけが広間に濃く流れている。
「美月ちゃんごめんね。いきなりでびっくりしたでしょ?」
「うん。キャラが濃い人達だよね。大学生ってみんなあんな感じ?」
「みんなってこともないけど……うちのサークルは木村先輩を筆頭に変わった人が多いのよね。里奈先輩もいつもあんな調子で……」
常識人のあかりがあのアクの強いメンバーの中で上手くやっていくのはさぞかし大変だろう。
「里奈先輩ってあの女の人だよね。木村さんの彼女?」
「彼女って言うか……何て言えばいいのかな。木村先輩には何人も彼女がいて、里奈先輩もその中の一人。いわゆる“セフレ”で、里奈先輩の性格的に彼女達の中でも自分が一番愛されてると思ってるんだよ」
美月も高校生だ。男女間のそれくらいの知識はある。あかりの里奈への評価は少し辛辣だった。
「何人もそういう関係の人がいるんだね。じゃあ女好きの女たらしは本当の話?」
「本当だよ。木村先輩はうちの大学では有名な遊び人なんだ。二十股かけてたって噂もある」
自分達以外に広間には誰もいないとわかってはいても二人の話し声は無意識に小さくなる。
「二十股……! ええー。顔はイケメンなのに、なんか印象変わっちゃった」
「木村先輩はあれでも教授達には首席卒業は太鼓判されてるほど成績はよくて、スポーツもできるからモテるのも無理ないんだよ。美月ちゃん狙われてるから気をつけてね」
「狙われてるってまさかぁ。そうそう、あかりちゃんは渡辺さんのことが好きなの?」
「えっ……ええっ?」
赤く染まるあかりの頬が美月の言葉を肯定していた。
「えっと……渡辺先輩とは付き合ってるの」
「そうなんだ! 告白したのはどっち?」
「私。だけど渡辺先輩は私のことは本気で好きじゃないと思う」
「どうして?」
「彼が好きな人は別にいるの。私はその人には敵わないのよ」
美月の目にはあかりのその表情はどこか悲しげに映っていた。
時間にして十分弱の出来事だったのが信じられないくらいに、目まぐるしく、あっという間に過ぎていき、隼人が残した煙草の香りだけが広間に濃く流れている。
「美月ちゃんごめんね。いきなりでびっくりしたでしょ?」
「うん。キャラが濃い人達だよね。大学生ってみんなあんな感じ?」
「みんなってこともないけど……うちのサークルは木村先輩を筆頭に変わった人が多いのよね。里奈先輩もいつもあんな調子で……」
常識人のあかりがあのアクの強いメンバーの中で上手くやっていくのはさぞかし大変だろう。
「里奈先輩ってあの女の人だよね。木村さんの彼女?」
「彼女って言うか……何て言えばいいのかな。木村先輩には何人も彼女がいて、里奈先輩もその中の一人。いわゆる“セフレ”で、里奈先輩の性格的に彼女達の中でも自分が一番愛されてると思ってるんだよ」
美月も高校生だ。男女間のそれくらいの知識はある。あかりの里奈への評価は少し辛辣だった。
「何人もそういう関係の人がいるんだね。じゃあ女好きの女たらしは本当の話?」
「本当だよ。木村先輩はうちの大学では有名な遊び人なんだ。二十股かけてたって噂もある」
自分達以外に広間には誰もいないとわかってはいても二人の話し声は無意識に小さくなる。
「二十股……! ええー。顔はイケメンなのに、なんか印象変わっちゃった」
「木村先輩はあれでも教授達には首席卒業は太鼓判されてるほど成績はよくて、スポーツもできるからモテるのも無理ないんだよ。美月ちゃん狙われてるから気をつけてね」
「狙われてるってまさかぁ。そうそう、あかりちゃんは渡辺さんのことが好きなの?」
「えっ……ええっ?」
赤く染まるあかりの頬が美月の言葉を肯定していた。
「えっと……渡辺先輩とは付き合ってるの」
「そうなんだ! 告白したのはどっち?」
「私。だけど渡辺先輩は私のことは本気で好きじゃないと思う」
「どうして?」
「彼が好きな人は別にいるの。私はその人には敵わないのよ」
美月の目にはあかりのその表情はどこか悲しげに映っていた。