早河シリーズ序章【白昼夢】
啓徳大学構内。冷房の効いたパソコンルームで課題のレポート作成を終えた青木渡は部屋を出た。
廊下を歩いていると携帯が鳴った。これはメールの着信音だ。差出人はspider。
_________
新しい仕事だ。
期限は今夜中。詳細はPCに。
頼んだよ、snake
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
snake《スネーク》、それが青木渡の組織での呼称。8月4日の夜、竹本晴也をガレージに呼び出した人物は青木だ。
当初は竹本がしつこく言い寄る里奈の名を使って竹本を誘いだそうと考えていたが、彼が美月を誘っている場面を青木は広間の入り口から見ていた。
美月に迫っていたところを隼人にやり込められて逃げるように広間を去る竹本の背中を見た時、これは利用できると思った。
青木は竹本の部屋に行き、やっぱり美月が会いたがっている、23時半に誰にも見られずにガレージに来て欲しいと言っていたと嘘の伝言を伝えた。
馬鹿な竹本はそれが美月からの誘いだと思い込み、あの大雨の中を広間の窓から外に出て意気揚々とガレージに向かった。
ちょうど不意の来客の上野刑事が部屋に入り、オーナー夫妻も自室にいる時間帯だった。
青木は竹本が出ていった後の広間の窓の鍵を閉め、安全圏である自分の部屋に戻った。
美月との甘い時間を思い描いていた竹本はガレージで待ち受けていた佐藤瞬を見てさぞ驚いただろう。犯人の佐藤は青木がどのような手段で竹本を誘い出したか関知していない。
佐藤とは組織の人間同士ではあっても佐藤の方が地位は幹部クラスであり、その時だけの協力関係を頼まれたに過ぎない。
竹本が殺されても佐藤が自殺を図る気でいたとしても青木の知ったところではない。
青木は誰に対しても関心がない。ただひとり、先輩の木村隼人にだけは憧れと嫉妬と言う相反する感情が芽生えていた。
隼人には青木渡としての自分には勝ち目がない、この男だけは敵に回したくないと思っていた。
だから青木はスネークとしての自分に誇りを持っている。彼の興味の対象はスリル。いかに他人の目を欺き通すか。それ以外に興味はない。
廊下を歩いていると携帯が鳴った。これはメールの着信音だ。差出人はspider。
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新しい仕事だ。
期限は今夜中。詳細はPCに。
頼んだよ、snake
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snake《スネーク》、それが青木渡の組織での呼称。8月4日の夜、竹本晴也をガレージに呼び出した人物は青木だ。
当初は竹本がしつこく言い寄る里奈の名を使って竹本を誘いだそうと考えていたが、彼が美月を誘っている場面を青木は広間の入り口から見ていた。
美月に迫っていたところを隼人にやり込められて逃げるように広間を去る竹本の背中を見た時、これは利用できると思った。
青木は竹本の部屋に行き、やっぱり美月が会いたがっている、23時半に誰にも見られずにガレージに来て欲しいと言っていたと嘘の伝言を伝えた。
馬鹿な竹本はそれが美月からの誘いだと思い込み、あの大雨の中を広間の窓から外に出て意気揚々とガレージに向かった。
ちょうど不意の来客の上野刑事が部屋に入り、オーナー夫妻も自室にいる時間帯だった。
青木は竹本が出ていった後の広間の窓の鍵を閉め、安全圏である自分の部屋に戻った。
美月との甘い時間を思い描いていた竹本はガレージで待ち受けていた佐藤瞬を見てさぞ驚いただろう。犯人の佐藤は青木がどのような手段で竹本を誘い出したか関知していない。
佐藤とは組織の人間同士ではあっても佐藤の方が地位は幹部クラスであり、その時だけの協力関係を頼まれたに過ぎない。
竹本が殺されても佐藤が自殺を図る気でいたとしても青木の知ったところではない。
青木は誰に対しても関心がない。ただひとり、先輩の木村隼人にだけは憧れと嫉妬と言う相反する感情が芽生えていた。
隼人には青木渡としての自分には勝ち目がない、この男だけは敵に回したくないと思っていた。
だから青木はスネークとしての自分に誇りを持っている。彼の興味の対象はスリル。いかに他人の目を欺き通すか。それ以外に興味はない。