早河シリーズ序章【白昼夢】
サングラスをかけた茶髪の男は面倒くさそうに片耳だけにはめたイヤホンを外す。
『高校生だろ? ガキには興味ねぇよ』
彼の名前は木村隼人。啓徳大学ミステリー研究会の会長だ。
『イヤホンしてたくせにちゃんと話は聞いてたな』
『女の話は嫌でも耳に入ってくる』
隼人の冷めた口調もいつものことなのか渡辺は気にしていない素振りでにやにやと笑った。
『それはまた便利なお耳様で』
『けど高校生は対象外だな』
『隼人の辞書にロリコンって言葉はないよな』
「隼人には私がいるんだからいいでしょぉ? また女遊びのこと考えてるの?」
隼人と渡辺の会話に割り込んできたのは佐々木里奈。茶髪のショートヘアーの里奈の耳には大きなフープピアス、長く伸びた人工的な爪はショッキングピンクのネイルアートで彩られ、ラインストーンがきらきらと輝いている。
知的で清楚な雰囲気の麻衣子や純朴で可愛いらしいあかりとは対照的に、派手な風貌の里奈は一見すると推理小説を好むようには見えないが、彼女もれっきとしたミステリー研究会の会員だ。
『木村先輩は黙っていてもモテますからね』
隼人の前の座席でノートパソコンを膝に乗せている青木渡は顔を上げて眼鏡のズレを直した。青木とは通路を挟んだ隣の席の竹本晴也も彼の言葉に続く。
『隼人さんは啓徳のキングですからねぇ。容姿端麗、首席卒業間違いなしの成績優秀、スポーツではサッカーの都大会選抜メンバー、おまけに学祭では前代未聞の3年連続でミスター啓徳。まさに敵ナシ』
『敵ナシって言うなら竹本、お前の方だろ?』
隼人がサングラスの奥から意味ありげな視線を竹本に送る。白々しく隼人を賛辞する言葉を並べ立てた竹本は苦笑してかぶりを振った。
『とんでもない。俺自身には何の力もありませんよ』
「ずいぶんとご謙遜ね」
『自分の器の大きさをわきまえているだけですよ。佐々木センパイ』
里奈の冷ややかな眼差しにも竹本は澄まし顔だ。
『高校生だろ? ガキには興味ねぇよ』
彼の名前は木村隼人。啓徳大学ミステリー研究会の会長だ。
『イヤホンしてたくせにちゃんと話は聞いてたな』
『女の話は嫌でも耳に入ってくる』
隼人の冷めた口調もいつものことなのか渡辺は気にしていない素振りでにやにやと笑った。
『それはまた便利なお耳様で』
『けど高校生は対象外だな』
『隼人の辞書にロリコンって言葉はないよな』
「隼人には私がいるんだからいいでしょぉ? また女遊びのこと考えてるの?」
隼人と渡辺の会話に割り込んできたのは佐々木里奈。茶髪のショートヘアーの里奈の耳には大きなフープピアス、長く伸びた人工的な爪はショッキングピンクのネイルアートで彩られ、ラインストーンがきらきらと輝いている。
知的で清楚な雰囲気の麻衣子や純朴で可愛いらしいあかりとは対照的に、派手な風貌の里奈は一見すると推理小説を好むようには見えないが、彼女もれっきとしたミステリー研究会の会員だ。
『木村先輩は黙っていてもモテますからね』
隼人の前の座席でノートパソコンを膝に乗せている青木渡は顔を上げて眼鏡のズレを直した。青木とは通路を挟んだ隣の席の竹本晴也も彼の言葉に続く。
『隼人さんは啓徳のキングですからねぇ。容姿端麗、首席卒業間違いなしの成績優秀、スポーツではサッカーの都大会選抜メンバー、おまけに学祭では前代未聞の3年連続でミスター啓徳。まさに敵ナシ』
『敵ナシって言うなら竹本、お前の方だろ?』
隼人がサングラスの奥から意味ありげな視線を竹本に送る。白々しく隼人を賛辞する言葉を並べ立てた竹本は苦笑してかぶりを振った。
『とんでもない。俺自身には何の力もありませんよ』
「ずいぶんとご謙遜ね」
『自分の器の大きさをわきまえているだけですよ。佐々木センパイ』
里奈の冷ややかな眼差しにも竹本は澄まし顔だ。