早河シリーズ序章【白昼夢】
 玄関を一歩入るとペンション内は冷房が効いていてとても涼しい。
一同は広間と呼ばれるスペースに案内された。広間にはコの字型の大きなソファーがあり、その周りに一人掛けのソファーが点々と配置されている。

 各々好きな場所に腰かけて一息つく。冴子と美月が冷えた麦茶のグラスをテーブルに並べた。

『皆様、遠いところようこそおいで下さいました。オーナーの沖田と申します』

福山編集長の大学時代の友人の沖田オーナーがよく通る声で挨拶をする。客人達は座ったまま沖田に小さく一礼した。

「お部屋は皆様二階になります。二階の西側が出版社の方々、東側を学生さん用としてご用意してあります。こちらが館内見取り図です」

冴子が人数分のルームキーをそれぞれのグループの責任者の福山と隼人に渡した。一緒に渡された見取り図を見て福山が首を傾げる。

『冴子さん、間宮先生の部屋はどこに?』
「間宮先生は一階西側のお部屋です。一階には私達家族の部屋以外は客室は間宮先生のお部屋しかありません。明日の準備があるとかで、先生はお部屋にこもっておられますよ」

 見取り図の西側一階の客室を冴子が指差した。小説家の間宮誠治が宿泊する西側一階の101号室は他の部屋と比べても客室の規模が大きく、中庭に向けてテラスがついている。

『これだけの人数がいるなら部屋割りを決めたら誰がどの部屋か、全員が把握できるようにしておく方が良いと思います。自分の部屋を間違えることはないにしても俺達も福山さん達が何号室か知っておきたいですし』

見取り図を見ながら各人の部屋割りの把握を提案する隼人に福山は頷いた。

『そうだな。じゃあ部屋割りをここに書き込んで……沖田、この見取り図コピーできるか?』
『コピー機はあるから可能だ』

 見取り図のコピーをとることは沖田の承諾は得た。
部屋を決める際、主に竹本を中心とした学生の間でひと悶着あったが、数分で全員分の部屋割りが決定した。

 ○西側一階 客室1室

 101号室(テラス付きスイートルーム)
 ……間宮誠治

 沖田オーナー夫妻の寝室
 美月の寝室
 キッチン・ダイニング・広間・中庭

 ○東側一階
 ラウンジ・書斎

 ○西側二階 客室5室
 宿泊者…並木出版編集部
 階段を上がって右側、手前から順に

 205号室(シングル)※空室
 204号室(シングル)……松下淳司
 203号室(ツイン)……佐藤瞬
 202号室(ツイン)……福山信雄
 201号室(セミスイート)※空室

 ○東側二階 客室8室
 宿泊者…啓徳大学ミステリー研究会
 階段を上がって左側、手前から順に

 213号室(ツイン)※空室
 212号室(シングル)……青木渡
 211号室(シングル)……竹本晴也
 210号室(シングル)……沢井あかり
 209号室(シングル)……加藤麻衣子
 208号室(シングル)……渡辺亮
 207号室(シングル)……佐々木里奈
 206号室(ツイン)……木村隼人

 ※全室 バス・トイレ・バルコニー付き

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