早河シリーズ序章【白昼夢】
間接照明のオレンジ色のライトが淡く灯る。開けた窓からは波のさざめく音が聞こえた。
シャワーを浴びてバスルームから出てきた佐藤は窓辺に立つ少女に声をかける。
『そんな格好で……冷えるだろ』
「ふふっ。平気だよ。これに佐藤さんのぬくもりが残ってるもん」
美月は借り物のシャツに袖を通して夜の海に光る月を眺めていた。彼女が着るには大きすぎる男物のシャツは佐藤が着ていた物。
午前零時はとうに過ぎていた。誰もが眠りにつく真夏の夜に結ばれた恋人たちは、永遠を願う夢を見る。
『まったく美月はどこまでも無防備だな』
「無防備?」
『夜に男の部屋に来て、今だって俺のワイシャツ一枚で。男ってものをわかっていない』
ぶかぶかのワイシャツに身を包んだ美月の身体を彼は後ろから抱き抱えた。入浴後で火照った佐藤の身体に美月は身を委ねる。
「私は佐藤さんになら何されてもいいよ?」
『はぁ。参るよ。とにかく薄着はダメ。女の子は身体を冷やしちゃいけない』
「はぁーい。佐藤さん、お父さんと同じ事言ってる」
佐藤は苦笑いの後に溜息を漏らし、いたずらに笑う美月にキスをする。佐藤の両手は美月の下腹部で組まれ、彼はそこを撫でた。
『身体だるくない? どこも痛いところない?』
「お腹の辺りがちょっとだけ痛いけど……でも大丈夫。佐藤さんが初めての人でよかった。本当にそう思うよ」
『……そう』
月光に照らされた少女の無邪気な笑顔が彼の心に消えない痛みを残す。
これでよかったのかわからない
どうしても離せなかった。突き放せなかった。
だから今夜だけは覚めない夢を見ていたい。
真夏の夜を楽しむ恋人たちは飽きることも尽きることもなく様々な話をした。
男がかつて両親と住んでいた雪の降る海辺の街のこと、男の両親がすでにこの世にいないこと。
自然とベッドに倒れ込み、押し寄せる情欲の波に二人は溺れた。
美月が着ていた佐藤のワイシャツと佐藤が着ていたバスローブがベッドの下に乱雑に脱ぎ捨てられている。
シャワーを浴びてバスルームから出てきた佐藤は窓辺に立つ少女に声をかける。
『そんな格好で……冷えるだろ』
「ふふっ。平気だよ。これに佐藤さんのぬくもりが残ってるもん」
美月は借り物のシャツに袖を通して夜の海に光る月を眺めていた。彼女が着るには大きすぎる男物のシャツは佐藤が着ていた物。
午前零時はとうに過ぎていた。誰もが眠りにつく真夏の夜に結ばれた恋人たちは、永遠を願う夢を見る。
『まったく美月はどこまでも無防備だな』
「無防備?」
『夜に男の部屋に来て、今だって俺のワイシャツ一枚で。男ってものをわかっていない』
ぶかぶかのワイシャツに身を包んだ美月の身体を彼は後ろから抱き抱えた。入浴後で火照った佐藤の身体に美月は身を委ねる。
「私は佐藤さんになら何されてもいいよ?」
『はぁ。参るよ。とにかく薄着はダメ。女の子は身体を冷やしちゃいけない』
「はぁーい。佐藤さん、お父さんと同じ事言ってる」
佐藤は苦笑いの後に溜息を漏らし、いたずらに笑う美月にキスをする。佐藤の両手は美月の下腹部で組まれ、彼はそこを撫でた。
『身体だるくない? どこも痛いところない?』
「お腹の辺りがちょっとだけ痛いけど……でも大丈夫。佐藤さんが初めての人でよかった。本当にそう思うよ」
『……そう』
月光に照らされた少女の無邪気な笑顔が彼の心に消えない痛みを残す。
これでよかったのかわからない
どうしても離せなかった。突き放せなかった。
だから今夜だけは覚めない夢を見ていたい。
真夏の夜を楽しむ恋人たちは飽きることも尽きることもなく様々な話をした。
男がかつて両親と住んでいた雪の降る海辺の街のこと、男の両親がすでにこの世にいないこと。
自然とベッドに倒れ込み、押し寄せる情欲の波に二人は溺れた。
美月が着ていた佐藤のワイシャツと佐藤が着ていたバスローブがベッドの下に乱雑に脱ぎ捨てられている。