早河シリーズ序章【白昼夢】
宿泊する西側と東側の部屋番号の下にその部屋に泊まる者の氏名を記入した館内見取り図が人数分コピーされ、ルームキーと共に各自に配られた。
「猫がいる!」
里奈が広間に入ってきた白猫に気づいて声をあげる。見取り図やルームキーを眺めていた者達の視線が一斉に一匹の猫に集まった。
「うちの飼い猫のリンです」
「可愛いー! リンちゃんおいで」
里奈が両手を広げてリンに近付くが、真っ白な毛並みの猫は里奈には目もくれずツンと澄まして美月の足元までスタスタ歩いていく。
『好かれなかったみたいだな』
「もう。隼人の意地悪」
リンの反応を面白がって隼人が吹き出す。リンに無視されて隼人にも笑われ、里奈は機嫌悪く口を尖らせた。
「ごめんなさい。リンは人見知りする子で家族以外にはなつかないんです」
「里奈先輩、私だってリンちゃんと仲良くなるのにだいぶかかりましたから。あの子もこれから馴れていきますよ」
冴子とあかりが里奈にフォローしている間もリンは美月の足元で甘えた声を出す。美月はリンを軽々と抱き上げて目線を合わせた。
「お腹空いたのかな? それともお散歩いきたい?」
「ご飯にはまだ早いわね。お散歩かもしれない。美月、リンを庭に出してやって」
「はーい」
リンを抱えた美月が広間でくつろぐ面々に会釈してその場を去る。福山は腕時計を見た。午後3時が近い。
『じゃあ夕食の18時までは自由にしていていいよ。解散』
福山の合図で各人はそれぞれの部屋に散った。
「猫がいる!」
里奈が広間に入ってきた白猫に気づいて声をあげる。見取り図やルームキーを眺めていた者達の視線が一斉に一匹の猫に集まった。
「うちの飼い猫のリンです」
「可愛いー! リンちゃんおいで」
里奈が両手を広げてリンに近付くが、真っ白な毛並みの猫は里奈には目もくれずツンと澄まして美月の足元までスタスタ歩いていく。
『好かれなかったみたいだな』
「もう。隼人の意地悪」
リンの反応を面白がって隼人が吹き出す。リンに無視されて隼人にも笑われ、里奈は機嫌悪く口を尖らせた。
「ごめんなさい。リンは人見知りする子で家族以外にはなつかないんです」
「里奈先輩、私だってリンちゃんと仲良くなるのにだいぶかかりましたから。あの子もこれから馴れていきますよ」
冴子とあかりが里奈にフォローしている間もリンは美月の足元で甘えた声を出す。美月はリンを軽々と抱き上げて目線を合わせた。
「お腹空いたのかな? それともお散歩いきたい?」
「ご飯にはまだ早いわね。お散歩かもしれない。美月、リンを庭に出してやって」
「はーい」
リンを抱えた美月が広間でくつろぐ面々に会釈してその場を去る。福山は腕時計を見た。午後3時が近い。
『じゃあ夕食の18時までは自由にしていていいよ。解散』
福山の合図で各人はそれぞれの部屋に散った。