早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 改札機を抜けてホームへ。ホームの自販機でコーラを買ってベンチに座り込んだ彼らは、互いに冷たいコーラを喉に流した。

『はぁー。久々にこんなに走った』
『まじバテる。なんなんだあいつら』

 悠真も隼人も汗だくだった。半分残るコーラのペットボトルを額に当て、悠真は深く息をつく。
隼人は片手に持つ携帯電話を操作して画面を悠真に見せた。

『走りながらだったからブレてるけど追ってきた奴らの写真撮っておいた』
『さすが抜かりねぇな。……三人か。喧嘩で囲むにしては少ない気もするが』
『喧嘩が目的なら俺達が学校出てすぐに囲んでそうだ。今は……いないな』

 ホームにいるのは杉澤学院高校の生徒が大半だ。尾行してきた三人組の男は全員黒っぽい服装、端的に言えばガラの悪い不良だ。

カーブミラー越しや携帯電話のブレた写真で見ても、見覚えのない顔だった。

『隼人、心当たりは? またどっかの男から女盗ったりしてねぇよな?』
『言っとくけど俺は女を盗ったことはねぇぞ。女が勝手に乗り換えてくるだけ』
『男の方はそうは思ってないかも。お前に女盗られたと思い込んで逆恨みしてるとか』
『えー。俺は悪くねぇし。つーか悠真はどうなんだよ? お前も女関係キレイとは言えねぇだろ。人妻に手を出してるんだし』
『俺か……』

 蛇のように長い列車がホームに流れてくる。二人は涼しい列車内に乗り込んだ。

 悠真は最近の女性関係を整理した。女関係で恨みを買うとすれば、離婚したばかりのユカ……は円満離婚だったと聞く。

チエミや、バツイチのアキコも元カレや元旦那との決着はついている。あとは……。

『ダメだ。見当がつかない。そもそもどこで恨み買ってるかわからねぇよな』
『アルファルドとレグルスの残党って線は?』

 アルファルドとレグルスはテストの賭け事件に関与していた不良グループ。先月に晴が黒龍の力を使って解散させた。

『ありえるな。それにシルバージャガーも怪しい。狙いが俺達全員なら、奴らが学校に引き返して晴や亮を狙う可能性もある』
『この写真添付して帰りは気を付けろって二人にメールしておくか』

 電車に揺られながら立ち話をする悠真と隼人の側で中年女性が顔をしかめて二人を見ている。恨みを買うだの、狙われているだの、健全な高校生男子の会話ではない。

二人を乗せた列車は新大久保駅を発車して間もなく新宿駅に到着しようとしていた。
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