早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
『兄貴。三小節目もっと音伸ばせねぇ?』

 晴や星夜とは対照的にクールな男がいる。LARMEのボーカリストの高園海斗。彼も星夜と同じ高校一年生だが、同い年の星夜や年上の晴よりも雰囲気が大人びている。

『ああ、ここは……』

そんなクールな海斗の兄の悠真もやはりクールで、本人達は似ていないと否定するが晴からしてみれば高園兄弟は見た目も中身もよく似ている。
悠真と相談をしていた海斗が、今度は英語の得意な隼人に英語詞の表現について意見を求めていた。

 海斗は人見知りだ。その海斗が最初からすんなりなついたのが隼人と亮。海斗の兄の悠真も晴も、あの人見知りの海斗がこの二人とはすぐに打ち解けたことには、正直驚いた。

星夜も隼人と亮になつき、LARMEは和気あいあいとバンド活動を続けている。

『あー、ただいま愛しのドラムちゃん! これからは毎日可愛がってやるからな、ベイビー、たくさんイかせてやるよ?』
『晴の手つきエロっ』
『晴にとってドラムは女だからなぁ』

 ドラムを扇情的に撫で回す晴を見て周りは苦笑していたが、陽気に振る舞う晴の心中には例の蒼汰の事件が影を落としていた。

 龍牙が蒼汰を罠にハメたエリカを捜している。そのことでは黒龍のメンバー達も動いているから何か進展があればこちらに連絡が来るだろう。

そして学校帰りの隼人と悠真を尾行していた三人組の男。隼人から送られたメールに添付されていた男達の写真はブレていて顔の判別はつかなかったが、念のため追試を終えて学校を出る時は用心した。

(隼人と悠真の尾行と蒼汰の事件は関係ないよな? ……まさかな?)

 とにかく今は打ち上げライブを楽しむことに専念しよう。明日のことは明日になってから考えればいい。
そんな偶然ありえない。この時の晴はそう思っていた。思いたかった。
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