早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
尾崎は一度立ち上がり、個室の外に誰もいないことを確認してソファーに戻った。かなりの警戒の仕方だ。
『相澤はヤクの売人だ。破格で安く仕入れたクスリを倍の値段で新宿を拠点にして売りさばいている』
『やはりそうでしたか。それを尾崎さん達は野放しにしてるんですか? 真壁組のシマで相澤に好き勝手やられてよく真壁の組長が黙っていますよね。真壁組が相澤に手出しできない理由でも?』
龍牙の探りを尾崎は鼻で笑って撥《は》ね付けた。
『悪いが俺にも立場ってものがある。言えるのはここまでだ』
尾崎が先に個室の扉を開けた。出ていけの合図だ。
まず通路に龍牙が出て、後ろから尾崎が出てくる。
『相澤のバックにいるのは誰ですか?』
尾崎の一歩前を歩いていた龍牙が振り向き様に爆弾を投下した。尾崎は足を止めて龍牙を睨み付ける。
『お前、死にてぇのか?』
『まさか。これでも可愛い妻と娘がいる身ですよ。何があっても死ぬつもりはありません』
『ああ、あの気の強い女をそのまま嫁さんに貰ったんだったな。じゃ、その可愛い嫁さんと娘のためにもお前はこの件には深入りするな。俺も昔やり合ったお前が消されるのは避けたい。一応、忠告はしたからな?』
真壁組若頭補佐の尾崎がここまで警戒して恐れる人物……相澤直輝の裏にただならぬ存在の匂いを感じた。
ホストクラブを後にした龍牙は欲望を発散させようと渦巻く人の群れを掻き分けて前を進む。
この街に潜む暗い闇に抗《あらが》う術を彼は模索していた。
『相澤はヤクの売人だ。破格で安く仕入れたクスリを倍の値段で新宿を拠点にして売りさばいている』
『やはりそうでしたか。それを尾崎さん達は野放しにしてるんですか? 真壁組のシマで相澤に好き勝手やられてよく真壁の組長が黙っていますよね。真壁組が相澤に手出しできない理由でも?』
龍牙の探りを尾崎は鼻で笑って撥《は》ね付けた。
『悪いが俺にも立場ってものがある。言えるのはここまでだ』
尾崎が先に個室の扉を開けた。出ていけの合図だ。
まず通路に龍牙が出て、後ろから尾崎が出てくる。
『相澤のバックにいるのは誰ですか?』
尾崎の一歩前を歩いていた龍牙が振り向き様に爆弾を投下した。尾崎は足を止めて龍牙を睨み付ける。
『お前、死にてぇのか?』
『まさか。これでも可愛い妻と娘がいる身ですよ。何があっても死ぬつもりはありません』
『ああ、あの気の強い女をそのまま嫁さんに貰ったんだったな。じゃ、その可愛い嫁さんと娘のためにもお前はこの件には深入りするな。俺も昔やり合ったお前が消されるのは避けたい。一応、忠告はしたからな?』
真壁組若頭補佐の尾崎がここまで警戒して恐れる人物……相澤直輝の裏にただならぬ存在の匂いを感じた。
ホストクラブを後にした龍牙は欲望を発散させようと渦巻く人の群れを掻き分けて前を進む。
この街に潜む暗い闇に抗《あらが》う術を彼は模索していた。