早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 撮影が終わり、理久はスタジオを出た。傘を持たない理久は空から絶え間なく降る雨に顔をしかめる。
駅まで走るか……そんなことを考えて小走りに道を進んでいた理久は前方に隼人の姿を見つけた。

(隼人? あんなところで何してるんだ?)

 隼人の周りには四人の男がいる。原宿の道端にいるには異質な雰囲気の男達だ。
隼人はこの後用があると言っていたが、あの男達が関係しているのか、しかし何か違う気もする。

ビニール傘が隼人の手を離れて地面に落ちた。隼人は車に押し込められ、男達も次々と車に乗り込んでゆく。

(おいおい、これって拉致? 誘拐? けっこうヤバい展開?)

いや、あの頭のいい隼人が簡単に拉致されるとは思えない。多分……大丈夫だろう。

 夏の夕立は原宿の街を暗い闇に包む。人々は時折鳴り響く雷に怯え、雨を避けて我先にと駅を目指して走っている。

誰もが隼人を連れ去った黒塗りの高級車の行き先を気にしていない。……理久以外は。
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