早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 前を行く男が扉を押し開けて中に入る。部屋は明るく、冷房も効いていた。そして隼人の予想通り部屋には亮と悠真がいた。

『やっぱり隼人もか』
『これで三人が揃ったな』

 パイプ椅子に座る二人の両手首には隼人と同じ銀色の手錠が嵌まる。

『悠真もかよ。陽平から亮が男に連れて行かれたって連絡もらってさ』
『あー、陽平に見られていたのか。でも拉致られたのは悠真が最初らしい』
『不本意ながらね』
『お話中のところ申し訳ありませんが木村様、そちらの椅子におかけください』

男が悠真と亮の間に用意されたパイプ椅子を示した。部屋に並ぶ椅子はあと一脚。

『晴は?』
『まだ来てない』

 隼人に聞かれて悠真が首を振る。このメンバーが集められたのなら、残るひとりは晴だろう。

『緒方晴様もじきにこちらにいらっしゃいます』

 隼人と悠真のやりとりを聞いていた男が愛想良く微笑んだ。表情は笑っていても目は笑っていない。薄気味悪い男達だ。

『いい加減あんた達の目的を教えろよ』
『私共からは何も申せません。私共の仕事はあなた達をここにお連れし、監視をすることだけです』

 亮が問い詰めても男達は答えを渋る。亮も悠真もここに来るまでの間に何も聞かされていないようだった。

 部屋には隼人を連れてきた四人の男の他にあと二人の男がいて、監視役は計六人。

(晴もじきに来るってことは拉致られたのか……?)

男達に命令を出し、自分達をここに集めて何かを企てようとしている人物がいる。

一体、誰がこんなことを?
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