早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 金髪ウルフの方に書いてある名前はエリカではなかった。

『……は?』

 すっとんきょうな声を出して晴はプリクラを凝視した。
この小さなシールだけでは判別がつかないが、金髪の女の方に書かれた名前を最近、どこかで聞いた気がする。

(まさか蒼汰をハメたエリカは……“あいつ”なのか?)

晴の記憶にかすかに残る例の女の顔とプリクラの女はまるで別人でにわかには信じられない。

『ミウごめん。このプリクラ、写真に撮らせて』
「うん、いいよ」

自分の携帯のカメラでプリクラの写真を撮って、それを蒼汰にメールで送った。蒼汰を罠にハメた女がこの女なのか確かめる必要がある。

ついでにいくつか届いていた新着メールを順に開く。新着の二通目は洸からだった。

(……え?)

 洸のメールに書かれていた内容が晴を混乱させる。何が起きているのかわからない。どうして……

『晴さん!』

 別ルートの聞き込みをしていた拓が戻ってきた。晴はすぐに洸からのメールを閉じて拓に顔を向ける。
拓が怪訝に晴の顔を覗き込んだ。

『晴さん大丈夫っすか? 顔色悪いですよ』
『あ……ああ。平気だ。行くぞ』

 協力してくれたトオルとミウに別れを告げて晴達は竹下通りを出た。洸のメールの件も含めてこれからの動きを考えていた。

バイクを停めた駐輪場に向かう二人の体を雨が濡らす。

亮が連れ去られた時間帯の高円寺駅付近では黒い高級車が目撃されている。
理久の証言では隼人が乗せられたのも黒の高級車。おそらく悠真も同じだろう。

(三人を拉致った奴は金持ちなのか?)
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