早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
悠真はさらに男の腹部を一撃して奴の体を壁に押し付ける。手錠の嵌まる不自由な両手で男の両腕を後ろ手に拘束した。
『手錠の鍵を出せ』
『……俺は持ってない』
『嘘つけ。正直に言え』
『本当だ。本当に鍵は持ってない』
男は腕を捻り上げられて苦しげに喘ぐ。悠真は隼人達が押さ付けている巨漢の方を見た。
『そっちの奴も鍵は持ってないのか?』
地面にねじ伏せられた巨漢の上には隼人と亮が体重をかけてのしかかっている。男も顔をひきつらせて頷いた。
悠真は舌打ちして男達を交互に見た。
『お前らの目的は? 誰の命令で動いてる?』
『俺はただあんた達を連れて来て監視するよう言われただけだ』
かすれた声で巨漢が呟いた。
『だからそれは誰の命令だって聞いてんだよ。お前らに命令してる奴の名前を言え』
隼人の口調も刺々しい。悠真も隼人も亮も、この状況にかなり苛立っていた。
『俺達は雇われただけだから詳しいことは……』
『ならその雇い主の名前は? 知らないはずないよな?』
『相澤……って男だ』
悠真が拘束する男が呟いた。悠真も、隼人も亮も首を傾げる。
『相澤って誰だ?』
『苗字だけじゃわかんねぇよ。フルネームは?』
『相澤直輝……相澤グループの社長の息子だ』
今度は隼人達に取り押さえられている巨漢が口を開いた。悠真は相澤グループの名には聞き覚えがある。
(相澤グループって電子機器メーカーの大元だよな? そのグループの息子がなぜ俺達を拉致する?)
扉の蝶番《ちょうつがい》が軋む音がした。悠真は一瞬、晴が連れられて来たのかと思った。もしそうなら他の監視役の男達も一緒に来てしまう。
隼人も亮も二人がかりで巨漢を押さえつけている。この状況で他の人間を相手にするのは分が悪い。
(喧嘩負けなしの晴を合わせればなんとかなるか……)
『手錠の鍵を出せ』
『……俺は持ってない』
『嘘つけ。正直に言え』
『本当だ。本当に鍵は持ってない』
男は腕を捻り上げられて苦しげに喘ぐ。悠真は隼人達が押さ付けている巨漢の方を見た。
『そっちの奴も鍵は持ってないのか?』
地面にねじ伏せられた巨漢の上には隼人と亮が体重をかけてのしかかっている。男も顔をひきつらせて頷いた。
悠真は舌打ちして男達を交互に見た。
『お前らの目的は? 誰の命令で動いてる?』
『俺はただあんた達を連れて来て監視するよう言われただけだ』
かすれた声で巨漢が呟いた。
『だからそれは誰の命令だって聞いてんだよ。お前らに命令してる奴の名前を言え』
隼人の口調も刺々しい。悠真も隼人も亮も、この状況にかなり苛立っていた。
『俺達は雇われただけだから詳しいことは……』
『ならその雇い主の名前は? 知らないはずないよな?』
『相澤……って男だ』
悠真が拘束する男が呟いた。悠真も、隼人も亮も首を傾げる。
『相澤って誰だ?』
『苗字だけじゃわかんねぇよ。フルネームは?』
『相澤直輝……相澤グループの社長の息子だ』
今度は隼人達に取り押さえられている巨漢が口を開いた。悠真は相澤グループの名には聞き覚えがある。
(相澤グループって電子機器メーカーの大元だよな? そのグループの息子がなぜ俺達を拉致する?)
扉の蝶番《ちょうつがい》が軋む音がした。悠真は一瞬、晴が連れられて来たのかと思った。もしそうなら他の監視役の男達も一緒に来てしまう。
隼人も亮も二人がかりで巨漢を押さえつけている。この状況で他の人間を相手にするのは分が悪い。
(喧嘩負けなしの晴を合わせればなんとかなるか……)