早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
 晴は溜息をついてうつむき、口を開いた。

『賭け事件の時に協力してくれた黒龍No.2の蒼汰、お前ら覚えてるか?』
『ああ、晴の相棒の奴だろ?』

隼人は蒼汰の顔を思い浮かべた。蒼汰は明るくて気のいい、晴が二人いるみたいな男だ。

『その蒼汰がクスリをやったと疑われて警察に連れて行かれたんだ。クスリの取引のあるクラブを警察がガサ入れした時に蒼汰が居合わせて、蒼汰と一緒にクラブに来ていたエリカって女はクスリの入ったカバンを置いて消えた。蒼汰は釈放されたけど、警察はエリカの行方を追ってる』
『最近お前の様子がおかしいとは思っていたがそんなことがあったのか』

 晴の話を聞いた三人はここのところの晴の様子がおかしい理由に合点がいった。

『黙っていてごめん。お前らに心配かけたくなくて』
『じゃあ蒼汰をハメたエリカって奴がこの女?』

亮が尋ね、晴が頷いた。

『この女が写ってるプリクラを写真に撮って蒼汰にメールで送って確認した。エリカの正体は兵藤桃子だ』

 晴が桃子を威嚇する。彼女は晴の話を腕組をして聞いていた。
晴が話をしている間、相澤はにやつきながら携帯電話を操作していた。

「緒方先輩の情報収集能力には脱帽します。そうよ、私がエリカ。緒方先輩の大事な大事な相棒さんの彼女でぇーす」
『蒼汰をハメたくせに何が彼女だ。もう蒼汰はあんたのこと自分の女だとも思ってねぇよ』
「それは私もよ。別に最初から好きでもなかったもの。ただこの計画に利用しただけ」

 フェザーピアスを指で弄ぶ桃子は悪びれる様子もない。相棒を利用したと言われた晴の怒りは頂点に達している。

両手に嵌められた手錠が晴の暴走のストッパーの役割を果たしているようだった。
< 138 / 163 >

この作品をシェア

pagetop