早河シリーズ序章【白昼夢】スピンオフ
24.もうひとつの陰謀
ワックスで逆立たせた茶髪、黒いタンクトップに黒のジーンズ、全身黒づくめの服装をした男は倉庫に積まれた木材に腰掛けて煙草をくわえた。
もうすぐ、もうすぐだ。
沸き上がる高揚と抑えきれない興奮。もうすぐすべてが手に入る。
バイクのマフラー音が近付いてくる。獲物が到着したようだ。男は立ち上がり倉庫内に集まる仲間達に目で合図する。
倉庫の前に1台のバイクが停車した。
(まさかひとりで来たのか?)
バイクのヘッドライトの光が眩しくて彼は目を細めた。バイクの主がエンジンを切り、ヘルメットを外す。
倉庫の薄暗い電球の下で二人の男の視線が絡んだ。
『来たのが洸じゃなくて残念だったな。お前には悪いが、洸も蒼汰もここには来ない。あいつらは別の場所に行かせた』
バイクに跨がったまま氷室龍牙は男と対峙する。やって来たのが龍牙だとは思わなかった男は驚愕の表情で龍牙を睨み付けた。
『お前誰だ?』
口を開いたのは龍牙と対峙する男ではない、倉庫内にいる彼の仲間達。龍牙はざっと人数を数えた。人数は三十人くらいだ。
『お前ら不良名乗るなら俺の顔くらい知っておけ。最近のガキは目上の人間への礼儀もなってねぇな』
溜息をついてバイクを降りた龍牙は、倉庫にいる自分よりも十歳は年下であろう男達に視線を走らせた。
『いいかお前ら。よぉーく覚えておけ。俺は黒龍初代リーダーの氷室龍牙だ』
龍牙が名乗ると倉庫内がざわついた。まだ自分の名もそれなりの効力はあるらしい。
『氷室龍牙ってあの伝説の不良の?』
『黒龍歴代最強のヘッドって聞いたことある』
『結成2年で関東の族のトップになった奴だろ?』
龍牙に関する様々な情報が彼らの間で囁かれた。中には噂に過ぎないものや事実と異なるものもある。
間違った情報もあえて否定はしないが、黒龍結成2年でトップになったのは間違いだ。正しくは結成1年と8ヶ月。
『とばっちり受けたくなかったら関係ない奴は大人しくしてろ。俺はコイツと話があるんだ』
睨みを効かすと煩《うるさ》かった連中が一気に沈黙する。今の龍牙はまだ30%の本気しか出していない。
これくらいで怯むとは手応えもない。
電灯の青白い光のせいなのか、龍牙を見て立ち尽くす男の顔は青ざめていた。
『俺としたことが迂闊《うかつ》だった。黒龍はメンバー同士、下の名前で呼び合うからな。俺も舎弟のフルネームまで気にしたこともなかった。だから相澤直輝の名前が出てもすぐにはお前が相澤の弟だと気づけなかった』
相澤直輝の名を出すと男の肩がピクリと跳ねた。龍牙は一歩前に進み出る。
『兄貴の方は晴達に用があるみたいだな。兄貴に晴や晴のダチの情報を流したのも、晴達に恨みを持ってる女にエリカって偽名使わせて蒼汰をハメたのも……全部お前が企んだことだろ。なぁ? 相澤拓』
龍牙と対峙する黒龍の現No.3、相澤拓は獣のような鋭い眼差しで龍牙を威嚇した。
もうすぐ、もうすぐだ。
沸き上がる高揚と抑えきれない興奮。もうすぐすべてが手に入る。
バイクのマフラー音が近付いてくる。獲物が到着したようだ。男は立ち上がり倉庫内に集まる仲間達に目で合図する。
倉庫の前に1台のバイクが停車した。
(まさかひとりで来たのか?)
バイクのヘッドライトの光が眩しくて彼は目を細めた。バイクの主がエンジンを切り、ヘルメットを外す。
倉庫の薄暗い電球の下で二人の男の視線が絡んだ。
『来たのが洸じゃなくて残念だったな。お前には悪いが、洸も蒼汰もここには来ない。あいつらは別の場所に行かせた』
バイクに跨がったまま氷室龍牙は男と対峙する。やって来たのが龍牙だとは思わなかった男は驚愕の表情で龍牙を睨み付けた。
『お前誰だ?』
口を開いたのは龍牙と対峙する男ではない、倉庫内にいる彼の仲間達。龍牙はざっと人数を数えた。人数は三十人くらいだ。
『お前ら不良名乗るなら俺の顔くらい知っておけ。最近のガキは目上の人間への礼儀もなってねぇな』
溜息をついてバイクを降りた龍牙は、倉庫にいる自分よりも十歳は年下であろう男達に視線を走らせた。
『いいかお前ら。よぉーく覚えておけ。俺は黒龍初代リーダーの氷室龍牙だ』
龍牙が名乗ると倉庫内がざわついた。まだ自分の名もそれなりの効力はあるらしい。
『氷室龍牙ってあの伝説の不良の?』
『黒龍歴代最強のヘッドって聞いたことある』
『結成2年で関東の族のトップになった奴だろ?』
龍牙に関する様々な情報が彼らの間で囁かれた。中には噂に過ぎないものや事実と異なるものもある。
間違った情報もあえて否定はしないが、黒龍結成2年でトップになったのは間違いだ。正しくは結成1年と8ヶ月。
『とばっちり受けたくなかったら関係ない奴は大人しくしてろ。俺はコイツと話があるんだ』
睨みを効かすと煩《うるさ》かった連中が一気に沈黙する。今の龍牙はまだ30%の本気しか出していない。
これくらいで怯むとは手応えもない。
電灯の青白い光のせいなのか、龍牙を見て立ち尽くす男の顔は青ざめていた。
『俺としたことが迂闊《うかつ》だった。黒龍はメンバー同士、下の名前で呼び合うからな。俺も舎弟のフルネームまで気にしたこともなかった。だから相澤直輝の名前が出てもすぐにはお前が相澤の弟だと気づけなかった』
相澤直輝の名を出すと男の肩がピクリと跳ねた。龍牙は一歩前に進み出る。
『兄貴の方は晴達に用があるみたいだな。兄貴に晴や晴のダチの情報を流したのも、晴達に恨みを持ってる女にエリカって偽名使わせて蒼汰をハメたのも……全部お前が企んだことだろ。なぁ? 相澤拓』
龍牙と対峙する黒龍の現No.3、相澤拓は獣のような鋭い眼差しで龍牙を威嚇した。